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映画「ブータン山の教室」

 人口わずか56人の村ルナナ。ブータン北部、標高4800メートルのヒマラヤ山脈の中にある村だ。秘境の地で伝統を守りながら生きる人たち。
 大自然とともにある日常に幸せを見つけ生きている大人たち。そして子どもたちは親の手伝いをしつつも「学ぶこと」に純粋な好奇心を向けている。
 ブータンで最もへき地のルナナで実際に暮らす人たちが登場する映画「ブータン 山の教室」(2019年/110分)のパオ・チョニン・ドルジ監督は、人々の素朴だが笑顔あふれる暮らしを圧倒的な映像美で映し出した。


 都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いている。電気もなければトイレットペーパーもない生活だが、グローバル化が進む今こそ、この作品は私たちに「本当の豊さとは何か」を教えてくれるのだ。
 映画の公式ページによると、パオ・チョニン・ドルジ監督はこの作品を撮ったきっかけについて「世界の景色がどんどん単一化されていくなかで、ブータンは独自の文化や伝統を頑なに守ってきました。インターネットとテレビが解禁されたのは、1999年。世界のなかでもかなり遅い方ですが、これは外から影響を受けることで、我々の文化が変わってしまうのではないか、という危惧があったからなのだと考えられます」。
 「実際、ブータンが少しずつ外の世界を受け入れていくようになると、必死に世界に追いつこうとするあまり、独自性が失われつつあるのではないかと、肌で感じるようになりました。本作は、ブータンのさまざまな話を継承したいという想いから生まれました」。
 「この映画のストーリーのあらゆる要素は、私がブータン中を旅したときに聞いたエピソードや、出会った人々がベースになっています。そこにこそ、ブータンという国の本当の“価値”が宿っているのではないかと私は考えたのです。私は、これからを生きる世代がブータンの独自性を忘れないでほしい、という思いを込めてこの作品をつくりました」。
 この作品は、第94回アカデミー賞(2021)でブータン映画史上初となる国際長編映画賞ノミネートを果たした。
 また、パオ・チョニン・ドルジ監督は、ブータン映画への多大なる貢献をによって国家へ貢献したと評価され、ワンチュク国王からドゥルック・トゥクセ勲章を授与された。ドゥルック・トゥクセの意味は「雷龍の最愛」。
 映画は、日本を含む、27言語、53カ国で劇場公開されたという。
 Blu-ray&DVDが発売となっている。
 また、自主上映会も受付中だ。

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