記念展「重文の秘密」
どこかで見たことがあるような有名アートばかりが並ぶ展覧会だ。それもそのはず、すべての作品が重要文化財なのだ。そういえば切手で見たことがあると思ったら黒田清輝(くろだ・せいき)の『湖畔』だったり、岸田劉生(きしだ・りゅうせい)の『麗子微笑』だったり。
2023年5月1日(月)、東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」を見てきた。ゴールデンウィーク中の平日だったが、あれほど混雑しているとは思わなかった。昼過ぎだったが、けっこう並んだ。
同展は明治以降の絵画・彫刻・工芸で重要文化財に指定されたもののみで構成されている。2022年11月時点で、重要文化財は68件が指定されているが、今回はそのうちの51点が展示されている。
作品の評価は時代によって変わる。それは評価の基準が時代を背景に変化するからだ。西洋のアートの影響を受けていることを肯定的に捉えるのか、あるいは否定的にとらえるかなど様々な要素が関係してくる。
多くの人が今日、傑作と認めている作品も、発表当時は、新しい表現を打ち立てたがゆえに理解されず、問題作とされていたことがあった。
展示室にまず入ると日本画のコーナーだ。一番最初に目に入って来るのが、近代絵画で最初に重要文化財に指定された狩野芳崖(かの・ほうがい)の『悲母観音』。大きな観音さまに見下ろされているような気分になる。
そのほか、菱田春草(ひしだ・しゅんそう)の『黒き猫』、横山大観(よこやま・たいかん)の全長40メートルにも及ぶ、ひとつぶの水滴がやがて大河となって流れるさまを墨で描いた『生々流転』も紹介されている。
洋画では、質感へのこだわりが感じられる高橋由一(たかはし・ゆいち)の『鮭』や、広く知られる作品ながら重要文化財に指定されたのが1999年になってからという前述の『湖畔』、これまた制作から90年近く経ってから指定された萬鉄五郎(よろず・てつごろう)の『裸体美人』も。
彫刻部門は、上野の西郷隆盛の銅像で知られる高村光雲(たかむら・こううん)の『老猿』が見応えがある。高村は制作のために、栃木県に行って大木を探してきたという。また精巧な渡り蟹があしらわれた初代宮川香山(みやがわ・こうざん)の『褐釉蟹貼付台付鉢(かつゆうだいはりつけだいつきはち)。古びた鉢のたたずまいが細かな蟹を引き立てている。また、鈴木長吉(すずき・ちょうきち)の『十二の鷹』なども並んでいる。
同展は2023年5月14日(日)まで開催中。休館日は月曜日、ただし、5月8日は開館。開館時間は午前9時半から午後5時まで(金・土曜日は午後8時まで)。入館は閉館30分前まで。観覧料は一般1800円、大学生1200円、高校生700円。東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口から徒歩3分。問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)。
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