藤田嗣治の猫と少女の絵たち
軽井沢安東美術館がオープンしたのが2022年10月。藤田嗣治(レオナール・ツグハル・フジタ)作品のみの美術館で、現在、企画展「藤田嗣治 猫と少女の部屋」が2023年9月12日(火)まで開かれている。
藤田が第二次大戦後におよそ1年間ニューヨークに滞在した時に描いた作品《猫の教室》(1949年)が初披露されている。躍動感あふれる猫たちを表情豊かに、ユーモアたっぷりに描いている。
藤田作品の代名詞である「乳白色の下地」の裸婦像も含まれるとともに、それぞれの時代ごとに藤田の画業を代表する、多彩かつ貴重な作品がおよそ120点紹介されている。
同美術館の作品は、安東泰志(あんどう・やすし)・恵(めぐみ)夫妻の貴重なコレクションである。
初公開作品5点は次の通り。《猫の教室》(1949年)——藤田は1920年代から人物とともに動物をよく描いているが、擬人化された動物が登場するのは1947年以降。猫の作品という枠組みを超えて、この時代の藤田を代表する貴重な作品の一つだ。
《腕を上げた裸婦》(1924年)——エコール・ド・パリのなかで藤田が大きな成功を収めることとなった「乳白色の下地」という新しい絵画技法の作品。
《雪》(1949年)——日本で戦争責任を追及された藤田は、やがて祖国を離れニューヨーク経由でフランスへ戻る決心をする。1年弱のニューヨーク滞在中に、同地で開催された個展に出品した希少な作品のひとつ。
《猫を抱く幼いグレコ》(1953年)——歌姫ジュリエット・グレコの結婚式に藤田がお祝いとして贈った作品。藤田のアトリエに定期的に足を運んでいたグレコは、ある時は幼少時代について、またある時は苦悩について藤田と語り合ったという。少女時代のグレコの面影を残したまま描かれた作品で、2人が深い友情で結ばれていたことを示しているともいわれる。
《モランディエールの肖像》(1934年)——1934年夏、藤田はマドレーヌを連れて軽井沢を旅行した。この作品のモデルはフランス法学者で、当時、日仏会館所長を務めていたレオン・ジュリオ=ド=ラ=モランディエール。この藤田の友人の肖像画は、藤田と軽井沢との関係をひもとく貴重な作品だとされる。
特別展示「藤田嗣治と日本文化 パリにおける『本のしごと』」が同時開催される。2023年8月1日(火)まで。藤田が脚光を浴びた1920年代半ばは日本が世界の仲間入りを果たした時期にあたり、「第2のジャポニズム」ともいえるような動きがみられるようになる。
これを受けて藤田は、日本をテーマとする挿画本に深く関わることに。今回は、藤田の挿画本コレクションのなかから、特に日本文化と藤田をテーマにした作品が紹介されている。