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鈴木エイトと統一教会

 霊感商法、偽装勧誘、合同結婚式などの問題を指摘されながら大手メディアにはあまり取り上げられないできた統一教会(世界平和統一家庭連合)を追い続けてきたジャーナリストがいる。鈴木エイトさんだ。
 2022年7月に安倍晋三元首相を殺した犯人が統一教会の「2世信者」であったことから、再び教団にスポットライトが当たる。そして、統一教会と自民党を中心とした政治家たちとの長年の関係が次々と明らかにされている。そうした報道で他の追随を許さないのがエイトさんである。
 そのエイトさんは2023年10月28日(土)、クレヨンハウス(武蔵野市吉祥寺本町2-15-6)で「元首相銃撃事件がもたらしたものー政界、メディア、社会ー」と題して講演した。進行は作家の落合恵子さん。

鈴木エイト「自民党の統一教会汚染」(小学館)


 2022年7月8日、統一教会の2世信者である山上徹也容疑者が安倍元首相を銃撃する事件が起こった。安倍氏は死去した。
 鈴木エイトさんは「この事件がすべてを変えました。教団の問題が顕在化し、多くの国民の知るところとなったのです。メディアも2006年以降は面倒な団体だからと報道を自主規制してきましたが、事件を機に健全なジャーナリズムが復活してきたと思っています」と語った。
 2022年12月には不当寄付勧誘防止法が成立。翌2023年10月13日には統一教会に対して解散命令請求が出された。裁判所が解散を命じれば、教団は法人格を失い、財産は清算される。
 「裁判所の判断が下るまで半年から一年ほどかかるかもしれません。財産を保全する必要がありますが、教団は自民党議員などに財産保全措置をとらないでくれとファックスを送りつけています」。
 与野党は、被害者救済に充てる資金が流出しない法的枠組みを検討中。自民、公明の与党は被害者救済に関するプロジェクトチームの初会合を2023年10月25日に開いた。11月中旬をメドに方向性を出す。
 野党の立憲民主党は財産を保全する特別措置法案を衆議院に提出、日本維新の会も財産保全の条項を盛り込んだ宗教法人法改正案を提出した(2023年10月26日付「日本経済新聞」朝刊)。

鈴木エイト「自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言」(小学館)


 統一教会が東京多摩市に「教団として日本で最大級の土地」を取得したと報じられた。エイトさんは「渋谷・松濤にある本部を移すのかもしれません。財産保全されてしまう可能性もあるのでどうするのか」という。
 「地域の人たちは心配でしょう。でも、何も悪いことをしていない2世たちが偏見や差別されたりすることがあってはなりません。それを念頭に置いておくことが必要だと思います。排除は問題の解決にはなりません」。
 鈴木エイトさんが統一教会を追いかけるきっかけとなったのは2002年6月、JR渋谷駅改札で偽装勧誘に出くわしたことだった。カルト問題というのは犠牲者がさらに犠牲者を生むことに気づいて、勧誘防止活動を開始。
 「今はSDGsがらみの勧誘や、コロナ下ではオンライン・サミットなどを開いてリクルートを開いていた。まず人間関係を構築するという手法です。誰でも被害に遭う可能性があるのです」とエイトさん。
 霊感商法については壺、印鑑などを高額で売りつけることが知られているが、エイトさんは「経典集を430万円献金させて売ることもしています。教団は毎年、数百億円を韓国の教祖一行に送金しています」と話す。
 エイトさんによると、「先祖解怨」という日本人信者から収奪する手口もあって、これは1000万円以上かかるといわれている。
 桜田淳子さんが参加したことなどで話題になった合同結婚式。「日本人2世たちも多く参加しています。これは「家族」ではなく「カルト」の問題です。幼少期から偏った教義を刷り込まれて行くことが問題なのです」。

鈴木エイト「「山上徹也」とは何者だったのか」(講談社+α新書)


 エイトさんは2007年からジャーナリストとして統一教会問題と対峙してきた。「高齢化社会で衰退する地域社会に入り込む宗教団体があるとして記事に書いたのです。そしてやがて、政治家と統一教会との関係を追及する闘いがスタートしました」とエイトさんは語った。
 統一教会はまず地方議員から接近を図り、2013年から国政に関与する政治家にアプローチを強め始めたという。
 例えば、岸信介の恩人の孫である北村経夫。約8万の統一教会票の上乗せで2013年参議院選挙で当選した。これには岸を祖父に持つ安倍晋三だけでなく菅義偉官房長官も関わっていたという。「政権の2トップが反社会組織と裏取引していたのではないか」(鈴木エイト)。
 2015年には教団は名称を「世界基督教統一神霊教会」から「世界平和統一家庭連合」変更した。文部科学省はこの変更を認めないできたが、当時の下村博文・文科大臣によるプレッシャーがあったといいます」。
 2016年にはUNITE(国際勝共連合大学生遊説隊)が突如現れて活動を始めた。エイトさんはいう「安保関連法制に抗議する学生のSEALDsがデモを活発に行い、選挙権年齢が18歳に引き下げられ、共産党が野党候補一本化に初めて同意した、そのタイミングだったのです」。
 そして現在、家庭教育支援法制定を目指すことに関係する策動がある。まずは自治体レベルでの条例からというアプローチだという。渋谷区などでのジェンダー平等への動きに反対する策動もある。
 「教団はダブルスタンダードです。2世は安保関連法制などを支持するUNITEで活動する一方で、韓国に派遣されて従軍慰安婦に関して謝罪をしたりしています。後者は安部政権とは相いれません」。
 鈴木エイトさんは「「宗教」と「政治」の問題ではありません。「カルト」と「政治」の問題です。勇気ある告発者をいかにして守るか」。
 「日本も(米国でカルトを調べた)「フレイザー委員会」を設置する必要があります。国民は何をするべきかですが、主権者である国民の投票判断が結果を左右するのです。私の仕事はそのための情報を有権者に提供することだと思っています」とエイトさんは語った。

クレヨンハウス東京店


 
 

 

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