見出し画像

映画「フジヤマコットントン」

 タイトルが「フジヤマコットントン」という映画。フジヤマって富士山のこと。そう、優しく見守ってくれる富士山。コットントンって綿のこと。そう、すべてを柔らかく包んでくれる綿(コットン)。
 カメラに映る、甲府盆地のド真ん中にある障害福祉サービス事務所「みらいファーム」を富士山が見守り、そしてコットンが優しく包み込む。すべてを優しく力強く肯定してくれるドキュメンタリーだ。
 愛すべき人々の日常を豊かに描いた、青柳拓(あおやぎ・たく)監督最新作「フジヤマコットントン」(2023年/95分/日本/配給:ノンデライコ)が2024年2月10日(土)よりポレポレ東中野(東京都中野区東中野4-4-1)ほかで全国順次公開される。

 


 青柳監督は母親の職場である「みらいファーム」を作品にしようと思いながら同時に、2016年に津久井山由利園という知的障碍者福祉施設で起こった「相模原障害者施設殺傷事件」のことを考えたという。
 植松聖被告は「障害者は生きている価値がない」と発言したが、「そんな価値がない人間なんて本当にいるのだろうか?」と青柳監督。
 「僕は人の価値を「ある/なし」の土俵に乗せない。目の前にいる人たちの魅力を、出演してくれ一人ひとりの日常の中にある「良い!」をみつめたい!それが「フジヤマコットントン」であり、僕のアンサーです」。
 幸福のおまじないのようなタイトル「フジヤマコットントン」。

青柳拓監督


 主な登場人物は:ひとおりひとおり織りが丁寧な「めぐさん」、てきぱきざっくり、めぐさんの親友「ゆかさん」、いつもひとりでぽつん「おおもりさん」、ひたすらもくもく絵が得意「たけしさん」、お花が大好きなベテラン「けんちゃん」、カメラに夢中でいつでも撮影「たつなりさん」。
 青柳監督は本作を撮るにあたってフランスのニコラ・フィルベール監督に影響を受けた。フィルベール監督の「すべての些細な事柄」(1996)は精神科医療の福祉施設のひと夏を追ったドキュメンタリー映画。
 その作品は、障害を持っている人々に対して外からの説明を加えることなく、彼らの生活のディテールや個性に対して丁寧に向き合っていた。青柳監督の「周囲の言葉がなくても、当事者の言葉や表現を捉えることで、十分にその魅力や人柄を描けるんじゃないかと思いながら撮影した」という。
 構成・プロデューサーは大澤一生、編集は辻井潔、撮影は山野目光政と野村真衣菜、音楽はみどり(森ゆに、青木隼人、田辺玄)。

 
 
 


  
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?