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「殿さまのスケッチブック」

 細川家熊本藩6代藩主の重賢(しげかた、1720-85)は藩政改革や産業奨励、藩校時習館、医学校再春館、薬草園蕃滋園の設立などを行い「肥後の鳳凰」と称される一方、動物、昆虫、植物などに強い関心を示した。
 参勤交代の途次では植物採集にいそしみ、精緻な植物図譜を作らせた。図譜に掲載された多様なスケッチは驚くほど細かく描き込まれており、自然に対するひたむきな情熱と好奇心が感じられる。
 日本の博物学は、中国の薬学・博物学である「本草学」の影響を受けて発達し、18世紀には「博物趣味」に熱中する大名が多く現れたが、重賢はその先駆けの一人であった。重賢と高松藩の松平頼恭(よりたか、1711-71)は、採集・飼育した動植物を彩色で写生し、その情報をメモした「博物図譜」作りに熱中。大名たちは写生図を貸し借りした。

竹原玄路筆、谷口鶏口賛「細川重賢像」江戸時代(18世紀)永青文庫蔵


 永青文庫(東京都文京区目白台1-1-1)では初夏展「殿さまのスケッチブック」を2024年4月27日(土)から6月23日(日)まで開催する。永青文庫での博物図譜をテーマとする展覧会を開催するのは33年ぶりとなる。
 細川家の殿さまが見た「リアル」が写された「殿さまのスケッチブック」を楽しんでいただきたいという。
 哺乳類や爬虫類、魚類などの様々な動物が記録されている「毛介綺煥(もうかいきかん)」。とりわけインパクトのあるアサヒガニの描写が有名で、書籍などでも多く紹介されてきた。

「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示


 絶滅したといわれるニホンオオカミには、宝暦8(1758)年の年記とともに、胴や顔、足の長さが記録されていることも貴重だ。

「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示
「毛介綺煥(もうかいきかん)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示


 また、昆虫が幼虫からさなぎになり、羽化して成虫になる様子を、日付と共に緻密に描いた日本初の昆虫生態記録が「昆虫胥化図(こんちゅうしょかず)」である。

 「昆虫胥化図(こんちゅうしょかず)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 前期展示
「昆虫胥化図(こんちゅうしょかず)」(部分)江戸時代(18世紀)永青文庫蔵 後期展示


 会期中、一部場面替えを行う。前期:4月27日~5月26日、後期:5月28日~6月23日。開館時間は午前10時から午後4時半(最終入館時間は午後4時)。休館日は毎週月曜日(ただし、4月29日、5月6日は開館し、4月30日と5月7日は休館)。
 入館料は一般1000円、シニア(70歳以上)800円、大学・高校生500円、中学生以下無料。
 連絡先は03-3941-0850。永青文庫公式ホームページは https://www.eiseibunko.com/

永青文庫



 

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