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原子力規制委1月17日会合

 能登半島地震で志賀原発の災害リスクが懸念されている中、、原子力規制委員会の杉山智之委員は「次に大きめの地震が来た場合、今使っている変圧器の外部電源が失われることが心配だ」と2024年1月17日(水)に開かれた同委員会において発言した。
 また、志賀原発1号機が外部から受電するための送電線にトラブルがあったというが、1月13日に「修理が完了した」との報告があった。
 今年の元旦に起こった震度7の地震によって志賀原発の1,2号機は変圧器の配管が破損して外部電源5回線のうち2回線が使えなくなった。
 原子力規制庁は「予備変圧器を使って外部から電力を受けており、万一の場合に備えてディーゼル発電機などを待機させており、そのうえで長期にわたる場合には外部から燃料を輸送してくることもある」と説明した。
 だが、杉山委員は「決して安心出来る状況ではないと思っている」との懸念を表明した。背景には、2011年の東日本大震災後の福島第一原発事故の際は外部からの電力がすべて失われて原子炉を冷却することが出来なくなり、メルトダウン(炉心溶融)という大惨事に至ったことがある。

変圧器からの油漏れについての「言い訳」 
 また、これまでに志賀原発では1,2号機ともに外部から電力を受ける変圧器から2回の油漏れが確認されている。
 事故調査委員会の説明では、変圧器の周辺に細い配管が張り巡らされており、一種のスプリンクラーのように水を噴霧するが、漏れた油が噴霧されたこの水と混ざって周囲に飛散したとのこと。
 事故調査委員会は「多少の漏れ」を認めたものの、「変圧器そのもの」が揺れで損傷したわけではなく、変圧器の下に油を貯めておく箇所があって、さらに変圧器エリアには石が敷いてあり、そこに油が飛び散ったという。
 杉山委員は強い揺れがまた来た場合に「また漏れないのか」と問うと、「同じ個所から漏れることはないと思います」との答えだった。
 これまでにおよそ2万リットルの油が漏れている。

北陸電力志賀原発

家屋倒壊で屋内退避が不可能に
 また、能登半島地震では多くの家屋が倒壊して、原発事故が発生した場合に屋内退避という選択肢が不可能であることが明らかになっている。
 1月13日に原子力規制員会と宮城県女川原発の地域住民との意見交換があった。その席上、住民たちから屋内退避が不可能な状況が今回石川県などで発生していることが問題点として指摘された。
 伴信彦委員は屋内退避が仮に出来る場合でも「2,3日が限度だと思う。どの範囲で、どういうタイミングで(退避を、またどういうタイミングで解除を)お願いするのかについて改めて議論をする必要がある」と述べた。
 田中委員は、地震のような自然災害の後に原子力災害が起こる「複合災害の場合に避難する場所がないといけない。どこにどうやって避難するのか、国で考えていかないといけないと思う」と話した。

複合災害における退避判断とは
 複合災害のケースでは、その地域の原子力プラントからの放射性物質放出の程度の見通しなど「プラントの状況や(空気中に放出される放射線量を計測する)モニタリング・ポストでの放出状況」が分からないと退避について決められないのではないかと杉山委員が発言した。
 ただ今回、志賀原発の北部30キロ圏内のモニタリング・ポストのデータが欠損しており、最大で18ヵ所でトラブルが発生した。原子力規制員会は「データは計測されていたが、通信上の問題だった」といっている。
 ただ、原発事故の際には放射線量の実測値によって住民の避難の可否を決めるので、モニタリング・ポストの不具合は問題だ。
 現在の原子力災害対策指針では、事故が発生した場合、原発から5キロ圏内の住民は避難を、5-30キロ圏内は屋内退避をするように定められている。今回の地震では志賀原発の30キロ圏内で多数の家屋が倒壊したうえ、避難計画の基になるデータを取るモニタリング・ポストの不具合もあって、屋内退避を定める指針に疑問が投げかけられている。
 
 
 
 

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