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大巻伸嗣 真空のゆらぎ

 大巻伸嗣(おおまき・しんじ)というアーティストが創り出す空間は光と闇を重要な要素としている。それは天体のリズムにしたがった始原的な生の感覚に満ち、また動植物や風景を象った装飾的なイメージは、古来人間の生活とともにあった豊かな文様の世界を想起させる。
 「存在するとはいかなることか」を長年探求してきた大巻の制作には、自然の摂理、そして生と死という逃れようのないサイクルのなかで生きることへの根源的な洞察が込められている。

 Gravity and Grace (部分)、2023 Photo courtesy of A4 Art Museum
Gravity and Grace (部分)、2018


 国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)は「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」を2023年11月1日(水)から12月25日(月)まで開催する。大巻が得意とする、空間と時間を抽出して体感させるような壮大なインスタレーションなどが紹介される。
 本展覧会は、国立新美術館の天井高8メートル、2000平米にも及ぶ、柱のない展示室で開かれる。演劇の舞台に例えられるような、身体感覚を強く刺激する空間に足を踏み入れる私たちは観客であると同時に、大巻が立ち上げた世界の一員としての演者にもなることだろう。
 これまでのシリーズをかつてないほどの規模に拡大したインスタレーションや、パンデミックのさなかに始められた映像による新作は、私たちの身体と強く響き合うだろう。

 Gravity and Grace, 2023 Photo courtesy of A4 Art Museum
Rustle of Existence, 2023 Photo courtesy of A4 Art Museum


 大巻は1971年、岐阜県に生まれた。現在は神奈川県を拠点に制作。「存在」とは何かをテーマに大巻は、環境や他者といった外界、記憶や意識などの内界、そしてその境界にある身体の問題を探求してきた。
 近年の主な個展に「The Depth of Light」(2023年、A4美術館、成都)、「地平線のゆくえ」(2023年、弘前れんが倉庫美術館)、「存在のざわめき」(2020年、関渡美術館、台北)、「存在の証明」(2012年、箱根彫刻の森美術館)などがある。
 国際展にも多く参加してきた大巻は、近年、「Rain」(2023年、愛知芸術劇場/新国立劇場)などの舞台芸術でも活躍している。

 


 開館時間は午前10時から午後6時(毎週金・土曜日は午後8時まで)。入場は閉館の30分前まで。休館日は火曜日。観覧料無料。
 問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)。国立新美術館の公式サイトは https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/ohmaki/



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