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特別展「京都・南山城の仏像」

 山城の国の南ということで南山城(みなみやましろ)と呼ばれる地域。京都と奈良に挟まれ、木津川に育まれた風光明媚な土地だが、京都と奈良の両方の影響を受けて独自の文化が華開いた。それは仏像も例外でない。
 独自の仏教文化が華開いたこの地には奈良時代や平安時代に創建された古刹が点在し、そこには優れた仏像が伝わっている。
 南山城に伝わる国宝、重要文化財をはじめとする貴重な仏像を通じて、その歴史や文化の奥深さを辿る特別展「京都・南山城の仏像」が2023年11月12日(日)まで東京国立博物館本館特別5室(東京都台東区上野公園13-9)で開催中だ。
 この展覧会は、浄瑠璃寺の九体阿弥陀(くたいあみだ)の修理完成を記念して開かれるもの。平安時代に貴族たちが極楽浄土を願い、九体阿弥陀(9体の阿弥陀如来坐像)を阿弥陀堂に安置することが流行したが、九体寺とも呼ばれる浄瑠璃寺には当時の彫像・堂宇(どうう)が唯一現存する。
 9体の阿弥陀如来坐像が並ぶ様子はまさに極楽浄土の世界を表している。会場ではそのうちの一体が展示される。
 東京国立博物館の増田政史研究員は「9世紀から12世紀への仏像の変遷を見ることが出来ます。仏像を見ることで時代の変遷と南山城地域の特色の2つを楽しむことが出来ます」と語った。
 浄瑠璃寺の九体阿弥陀は2018年度から5年をかけて修理された。明治時代以来およそ110年ぶりのことだった。そのうち今回展示されるのは《阿弥陀如来坐像》で堂内では見られない台座も見ることが出来る。

(左)国宝《阿弥陀如来坐像》(九体阿弥陀のうち)平安時代 12世紀 京都・浄瑠璃寺

 《十一面観音菩薩立像》は9世紀に中国の唐の影響を受けている。香木から作られた檀像を意識している。唐文化を受容した奈良の都と南山城との結びつきを示しているといえよう(増田研究員)。

重要文化財《十一面観音菩薩立像》平安時代 9世紀 京都・海住山寺

 また、《普賢菩薩騎象像》には10世紀に見られた日本風(和様)への歩みがある。太い鼻筋、優しさが感じられる顔つき、衣の柔らかさが伝わる表現などが日本風への変化をうかがわせる特徴だ。

《普賢菩薩騎象像》平安時代 11世紀 京都・岩船寺

 さらには四天王のうち《広目天立像》のお目見えする。11-12世紀の貴族文化が盛んだった頃の作品だ。「色鮮やかな金箔を細く切って張り付けた文様が残っているのは貴重です」と増田研究員は言った。
 増田研究員は続けて「また大ぶりな植物の文様も描かれています。これは奈良時代以来の伝統的なモチーフです」と解説した。

《広目天立像》(四天王のうち)平安時代 11-12世紀 京都・浄瑠璃寺

 京都・禅定寺には《十一面観音菩薩立像》がある。重要文化財。禅定寺は10世紀末に東大寺の平祟(へいそ)上人が創建した。

《十一面観音菩薩立像》平安時代 10世紀 京都・禅定寺

 《千手観音菩薩立像》は千本の腕で人々を救うという。普通は42本に省略されているが、これは千本にせまる数である。

《千手観音菩薩立像》平安時代 12世紀 京都・寿宝寺

 開館時間は午前9時半から午後5時まで(入館は閉館の30分前まで)。休館日は月曜日だが、9月宇18日、10月9日は開館。9月19日(火)と10月10日(火)は閉館。
 観覧料は当日一般1500円、大学生800円、高校生500円。問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)。公式サイトはhttps://yamashiro-tokyo.exhn.jp
 仏像好きなみうらじゅんさんといとうせいこうさんが本展の「仏像大使」(広報大使)を務める。会期中にトークショーを開催する予定。

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