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愛の画家シャガールの版画

 宙を舞う恋人たちや花束、動物などを幻想的で色彩豊かに描く「愛の画家」として知られ、20世紀を代表するアーティストのひとりであるマルク・シャガール(1887-1985)。

マルク・シャガール

 帝政ロシア領のヴィテブスクにユダヤ人として生まれた。戦禍や革命に翻弄されながらモスクワやベルリン、パリやニューヨークへと活動の地を移した異邦人画家としての境遇が作品に陰影を与え、奥深いものにしている。
 シャガールは絵画のかたわら版画制作にも熱心に取り組み、2000点以上の作品を手掛けた。版元や工房との協働によって生み出された版画には、絵画とは一味ちがった独特の表現と味わいが刻み込まれている。
 神奈川県立近代美術館の望月コレクションから、さまざまな年代・技法による6つの版画集からの厳選約140作品を紹介する「マルク・シャガール 版にしるした光の詩(うた)」が世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)で2023年7月1日(土)より8月27日(日)まで開催される。
 1950-60年代に刊行された、技法もさまざまな6つの版画集をタイトルごとに紹介する。『ダフニスとクロエ』や『サーカス』などシャガール版画を代表する名作はもちろんのこと、『馬の日記』や『悪童たち』といった知られざる逸品も一堂に紹介される。

モノクロームのエッチングも
 色彩豊かなリトグラフばかりでなく、陰影が際立つモノクロームのエッチングによる『ラ・フォンテーヌ寓話集』や、木版による荒々しく素朴な味わいの『ポエム』など、ひとくちに版画といっても多様な表現がみられる。本展ではシャガール版画の技法ごとに異なる表情を楽しむことが出来る。
 今回展示される作品はいずれも非常に状態が良く、シャガールが表現したかった絶妙な色彩を当時のままに、堪能することが出来よう。
 版画集は、詩やテキストの挿絵として絵がある、あるいは絵に着想を得た詩や物語がそえられることが多く、「絵と言葉」が混然一体となった表現形式。本展では、版画の表現している世界観をよりよく理解するため、絵とともにある詩や物語のあらすじなどもわかりやすく紹介する。
 学芸員によるレクチャー「版画家としてのシャガール」も予定されている。7月23日(日)、8月12日(土)の午後2時からおよそ1時間、講堂にて。先着140名。無料。当日午後1時半より講堂前で整理券を配布。

世田谷美術館外観

 世田谷美術館の開館時間は午前10時から午後6時まで(最終入場時間は午後5時半)。休館日は毎週月曜日。ただし7月17日(月・祝)は開館、7月18日(火)は休館。観覧料は一般1200円、65歳以上1000円、大高生800円、中小生500円、未就学児無料。
 問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)。世田谷美術館の公式サイトはhttps://www.setagayaartmuseum.or.jp/□。

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