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知らない家から、夏のデート先を決めた

 夫婦の休みが被った日はデートをする日と決めている。

 私は接客業施設のスタッフで、かつ人員不足なものだから、土日祝は全く休めない。

 私の夫は、結婚する前は平日休みも割と多めの仕事だったのだが、会社の改革だかで土日休みが中心になりつつある。それでも有給や土日の宿直明けは平日も休みになる。

 夫は行きたい場所がない。趣味がジョギングと筋トレとゲームいう人。そのため、行き先は私が決めて良いよとなっている。
 もちろん、体調が悪いときは家で過ごすこともある。

 先週月曜日のこと、2人の休みが重なったので、デートを計画することとした。

とにかく夏を感じたい。

 夏といえば、海とかプールとか、スイカとか祭りとかひまわりとか、色々ある。

 ふと頭によぎったのが、ある床屋さんだった。
 駅に行くまでの道にあり、営業しているのかしていないのか分からない、古い床屋さんだ。
 その床屋さんは一年中、風鈴をつけっぱなしなのだ。

 一年中つけているものだから、風の強い日には、音が途切れずに奏でているし、9月の台風の時期は暴れ回る勢いで独り爆演奏をしている。
 しかしそこを通る度に、風鈴の存在を感じていた。

 その一年中奏者の風鈴をふと思い出した。

そうだ、風鈴を買おう。

 そこで風鈴を帰る場所はないかとネットで探していると、ちょうど7月6日から埼玉にある川越氷川神社で縁結び風鈴の祭事をやっているのを発見した。

https://enmusubi-fuurin.jp/

 サイトをよく見たら、職人さんの江戸風鈴が購入できるようだった。
 ※神社だと『買う』ではなく、『授かる』の表現が正しいそうなので、以下授かると表記しています。

 デート先は川越がいいと夫に伝えると、「いいよ〜」と返事が返ってきた。

 川越駅からバスで氷川神社前まで向かい、鳥居を潜るところから風鈴回廊が至るところで出迎えてくれた。
 お参りをしたあと、境内を回らせていただく。

フォトスポット位置もある赤風鈴
風鈴回廊
木の短冊に願い事を書くこともできる

 風鈴はお守りなどを授与している社務所で授与していただけるそうなので、そこで青色をいただいた。

縦長のイラスト付きの可愛い袋
素敵な吊り灯籠
境内を出て道路を挟んだ側にある風車


 目的は果たしたが、せっかくなので川越観光をする。
 小江戸もいいが、ちょうど菓子屋横丁を舞台にしたTRPGの動画を見たせいもあって、小江戸商店街を西にいったところにある菓子屋横丁にも足を運んだ。

 しかし、月曜休みで店が開いてない。

がらんどうな菓子屋横丁の通り

 そりゃそうだ。土日にお客さん来るだろうし、月曜休みが多くなるよね。
 でも開いている店もあったので、巨大麩菓子を買ったりと満喫した。

 小江戸商店街にあるミッフィーのキッチンベーカリーで、パン屋のお姉さんが私の手にしている風鈴の手提げ袋を見て、「風鈴があるんですか?!いいですね」と声をかけていただいた。

みっふぃー蔵のきっちん&ベーカリー
出迎えミッフィー
※ミッフィーが話しかけてくれたのではない。

 川越にはもう何回も、夫と一緒に来ている。
 しかし風鈴が入った袋を片手にして、いつもと違った街歩きをした。そんな気分になれる。

 歩いた場所はいつものルートと変わらないのに。

 『川越観光』が目的ではなく、『風鈴』を手に入れることが目的だったから。

いつもと違う“目的”を作って遊びに行く。


 もちろん、行ったことのない場所であるなら、観光名所巡りを優先するだろう。

 でも、
 何回も行ったことのある観光地なら。
 普段から行っている場所なら。
 毎年行っている夏祭りなら。

 そんな楽しみ方はどうだろうか。
 別に奇抜な目的を作る必要はない。風鈴だって、特別変わったことではない。
 ただ、自分にとってはいつもと違うこと。それだけのこと。

 今回は知らない人の家の風鈴から思いついた。
 いつも会社に向かう道や、駅に向かう道で違った見た方をすれば、また新しい発見があるかもしれない。

 雑誌のカフェ巡りや食べ歩きももちろん楽しそうだし、私もそういう特集は好きだ。

 旅行ではなく、お出かけだったら、
 自分だけの特別な目的を作りたい。

 祭りの屋台では、普段食べないりんご飴を食べてみたい。
 冬はクリスマスマーケットで、素敵な『クリスマスドーム』を見つけたい。

 カフェだったら、今は『ダッチ・コーヒー』というものを飲んでみたいところだ。
 ただ、夫はコーヒー:牛乳=1:9
 +砂糖大さじ2杯で飲むくらい、甘いコーヒーが好みだ。

 どこかいい場所はないだろうか。






風が吹くのを待っている青い江戸風鈴。


2024.7.16
月町さおり


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