落語日記 仲良し四人組のバラエティさにあふれる落語会
RAKUGOもんすたぁずin池袋 CHAPTER94
8月26日 池袋演芸場
毎回通っている会だったが、このところ予定が合わず、今年の1月のスペシャル公演以来のご無沙汰となってしまった。今回も年に一度、池袋演芸場で開催している特別な回。普段はゲストを呼ばないが、今回は特別な回として、太神楽曲芸の鏡味仙志郎さんと仙成さんのお二人がゲスト出演。この会は、毎回ネタ出しなので、楽しみに出掛ける。
古今亭松ぼっくり「金明竹」
志ん陽門下の前座。この会ではお馴染みの前座さん。久しぶりに拝見したが、言い立てもすらすらと口跡鮮やか。前座さんの成長ぶりは著しい。
古今亭志ん陽「鰻屋」
出番順は、毎回交替。この日は志ん陽師匠がトップバッター。いつものようにニコヤカに登場。
マクラは、この会の来歴の話。この会は、来年で100回を迎えることになる。落語協会も来年がちょうど100周年の記念の年。奇遇なご縁、何とかコラボできないだろうか、そんな会の来歴について語った志ん陽師匠。
いずれにしても、3人の二ツ目と1人の前座が始めた会も、回を重ねて今回が94回。ちなみに、第1回の情報が無いかと、ネットで検索してみたら見つかった。なんと、第1回は、今から19年前の平成16年(2004年)9月20日に落語協会の二階からスタートしたようだ。ということは、100回目を迎えることになる来年が、20周年の記念の年となる。仲間で始めた会が、これだけ長く続く例は珍しい。演者が主催している自主公演なので、四人の仲が良く、かつ幹事役がしっかりしていないと続かないはず。そういう意味でも、凄い会なのだ。
なお、ネットで見つけた第1回の当時の芸名と演目は以下のとおり。
春風亭朝也「真田小僧」
柳家喬之進「天狗裁き」
仲入り
柳家右太楼「家見舞」
古今亭朝太「片棒」
全員、今と違うお名前が懐かしい
志ん陽師匠のマクラに戻る。この会はネタ選びに苦労している 各演者ごとに過去の演目と被らないという暗黙のルールがある。確かに94回も回を重ねてくると演目選びは大変そうだ。
今回は、土用の丑の日に鰻という季節柄、夏の風物詩の鰻の噺を選んだとのこと。しかし、この噺は短いので、マクラで繋ぎますと、ウィキペディアで調べた鰻の知識を披露。
鰻といえば、志ん陽師匠の最初の師匠である志ん朝師が、断ち物として鰻を食べなかったことが思い浮かぶ。結局、その話は登場しなかった。
確かに、寄席で掛けられる長さ。それでも、ただ酒を飲みたい一心の男の欲望が、所々で笑いを呼んでいる密度の濃い一席だった。
春風亭三朝「首ったけ」
マクラは、豪華客船飛鳥Ⅱに乗船して、洋上で乗客に落語を披露する仕事の話から。三朝師匠が語る、みちのく北海道クルーズの船旅でのエピソードが楽しい。
本編は、廓噺の中でもあまり聴けない、珍しい部類の演目。おまけに筋書きも異色。廓噺といえば、たいがいが客は花魁に振られることが多い。しかし、この噺の主人公の辰っつぁんは、異例とも言えるほどモテモテ男なのだ。
当初の相方の紅梅花魁と喧嘩になるが、売り言葉に買い言葉、嫌われていた訳ではない。演目名が下げの紅梅花魁のセリフなのだが、まさに辰っつぁんが惚れられている証しとなっている。次に向かった妓楼の若柳花魁にも、前から好きだったと大モテ。
そんな男性陣の願望を一身に背負った羨ましい辰っつぁんを、三朝師匠は飄々と描いている。特に図抜けた色男でもなく、どこにでも居る普通の江戸っ子なのだ。少しばかり短気なだけだ。そんな辰っつぁんの大モテぶりは、我々一般的庶民に夢を見せてくれる。辰っつぁんは、女郎買いのヒーローなのだ。
仲入り
柳家燕弥「七段目」
開口一番、この日の昼、鈴本演芸場で弟弟子の柳家さん光さんの代演だったので、そこでこの演目を一回披露してきました、なので予行演習してきたのでバッチリです。嬉しそうに笑顔を見せる燕弥師匠。しかし、結果的に、自らハードルを上げてしまった燕弥師匠、期待も高まる。
本編は、エキセントリックな若旦那の傍若無人な行動が爆笑を呼ぶ一編。若旦那の風情が似合う燕弥師匠。役者風の台詞廻しも堂に入っている。
店の二階での定吉との芝居ごっこは、鳴り物が入り、見どころになっている。忠臣蔵の実際の舞台を観ていなくても、二人の掛け合いで充分に想像がつく。この場面は、演者の技量が問われるところ。
燕弥師匠の役者らしさは違和感がない。大仰さを感じるくらいで丁度よい。予行演習の効果もバッチリだ。若旦那が本身の刀を振り回して、定吉が素に戻るところも見事。最後にツケ打ちも決まって、芝居噺らしい結末。
鏡味仙志郎・仙成 太神楽曲芸
ゲストは、寄席でお馴染みの二人。寄席で開催していることを強く感じさせる効果抜群。
柳家小傳次「提灯屋」
この日の主任は、小傳次師匠。ちょっと、ふくよかになられたか。
マクラは、この時間は24時間テレビが放映中という話題。放送されていることは知っているが、ほとんど観ないそうだ。最近の若者は、テレビの地上波放送をあまり観ない。ネットの有料放送やYoutubeなど、メディアの選択肢が多くある。しかし、落語家の知名度は、まだまだテレビに出演するかどうかの影響が大きい。広告媒体としては、テレビCMの影響は少なくなっているように感じる、そんな広告の話から本編へ。
小傳次師匠のネット情報によると、ネタ下ろしだそう。
町内の若い衆たちの、家紋を判じ物で表現する悪巧み。この謎掛けのようなクイズのような家紋の表現は、言葉が決まっているので、きっちりと伝えないと面白味がない。なので、結構難易度の高い噺ではないかと感じている。また、下げの言葉も上方の表現なので、予め説明を仕込んでおかないといけない。
そんな難しそうな噺を、いつものようにフワフワと軽い雰囲気で語ってくれた。家紋の判じ物も、分かりやすく楽しめた。
最後に登場する隠居の貫禄も充分。若手と思っている小傳次師匠が、貫禄を感じられるくらいの年齢になられたんだとシミジミ。この会が20年も続いていることを、改めて実感した次第。
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