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落語日記 寄席の主任興行が続く、若手女流落語家のトップランナーのこみち師匠

浅草演芸ホール 6月中席昼の部 柳亭こみち主任興行
6月18日
浅草演芸ホールは久し振り、今年の初席以来。日記を読み返してみると、まだまだコロナ禍騒動の真っただ中。今回は、感染状況も落ち着いてきていて、観客も以前の状況に戻りつつある印象。この日の客席の制限は、最前列のみ着席禁止。
この日の浅草は人出が多く、観光客で賑わっている。客席も、途中での入場や退出が多く、観光地浅草ならでは雰囲気が戻っている。主任を待たないで帰ってしまう観客が多いのは、浅草演芸ホールの特徴だ。こみちファンから見るともったいない。それでも、こみちファンも大勢駆け付けていたようで、この日も盛況な客席。
この日の客席は、よく声を出して笑う、反応の良い観客。この日の盛り上がりは、この陽気な観客の皆さんに大いに助けられている。
この芝居に続いて、鈴本演芸場7月下席の主任も決まっているこみち師匠。人気とともに席亭の評価も上がり、絶好調だ。
 
こみち師匠は、古典落語を女性を主役にしたり、女性目線での落語に変える取り組みをされている。こみち流落語として古典を改作する、そんな取り組みも落語ファンに広く認知され支持を集めつつある。私もこみち流落語のファンである。こみち師匠の会や主任興行を訪ねるのは、どんな改作がなされたのだろう、どんな登場人物に出会えるだろう、そんな楽しみがあるからだ。
 
さて、この日の演目「ほっとけない娘」は、落語協会の新作落語台本募集の佳作入賞作品で、柳家小ゑん師匠が手を入れて改良してきた演目。私はこの演目は初めて聴く。なので、小ゑん師匠の高座と比較できないが、こみち流落語と呼んでもよいほど、ご自身の噺になっている。
噺は、独身の仏像オタクの女性が主人公。娘の結婚を心配する両親や見合い相手などを巻き込んだ大騒動。オタクの人物造形は小ゑん師匠の得意とするところ。高座に掛け続けることで、小ゑん師匠がこの噺を磨き上げてきたものと思われる。その小ゑん師匠の出番の後で、主任としてこちみ師匠がその演目を掛けるのだ。
この日の小ゑん師匠の噺は、十八番の「鉄の男」。鉄道マニアという、同じくオタクが登場する噺だ。オタクが付くと言えばそうなのだろうが、あまり気にすることはないと思う。むしろ、オタクの競演は、お二人の表現の違いが見えて楽しさ倍増だ。
 
こみち師匠の高座は、新作であっても、登場人物たちの人物造形に違和感はない。主役の女性のオタクっぷり、弾けっぷりはいつものこみち流。心配する真面目な両親をよそに、娘一人だけが弾けていて、その対比で可笑しさ倍増。
見合いの相手が仏像そっくりの風貌で、あだ名が大仏君という寺出悟(てらでさとる)。彼自体は伝聞でしか登場しない。
二人で行った仏像巡りのデートを嬉々と話すオタクの娘の様子が可笑しい。訪ねた先々の仏閣や仏像を言立てのように話すところは、黄金餅の道中付けのようで、落語ファンには楽しい仕掛け。
オタクの表現は、小ゑん師匠とは異なるこみち師匠。特に女性のオタクは、こみち流落語の素材として今までになかったもの。エキセントリックな性格の主人公だが、目いっぱいの明るさによって、新たな人気キャラの出現だ。この演目も、こみち流落語のラインナップに加わるものとなるだろう。
 
この日の顔付けは、小三治一門や柳家の重鎮でバックアップしているような印象。もちろん、燕路師匠も膝前でアシスト。
寄席が団体戦であることを感じさせる、この顔付けは、席亭の功績。久々に寄席の楽しさを味わった半日だった。
 
入船亭扇ぽう改メ扇太「金明竹」
途中入場。二ツ目昇進の披露目の高座。
 
林家たけ平「織田信長」
 
すず風にゃん子・金魚 漫才
 
隅田川馬石「鮑のし」
 
柳家はん治「妻の旅行」
 
換気のための仲入り
 
カンジヤマ・マイム パントマイム
 
柳家一琴「のっぺらぼう」
 
入船亭扇遊「初天神」
 
三増紋之助 曲独楽
 
柳家小ゑん「鉄の男・中」
 
鈴々舎馬風「楽屋外伝」
 
仲入り
 
柳家三之助「替り目」
 
ロケット団 漫才
 
林家正蔵「読書の時間」
 
柳亭燕路「かぼちゃ屋」
 
立花家橘之助 浮世節
助演 締め太鼓 金原亭駒平
 
主任 柳亭こみち「ほっとけない娘」
 
立花家橘之助師匠と二人で踊り「桃太郎」を披露

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