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落語日記 寄席の伝統的な大喜利を承継している金原亭馬生一門
浅草演芸ホール 7月上席昼の部 金原亭馬生主任興行 大喜利「茶番」
7月7日
浅草演芸ホールの7月上席昼の部は、馬生一門が中心となって行っている茶番を披露する大喜利が毎年の恒例。そして、主任を務めるのが、もちろん馬生師匠。馬生一門ファンとして、毎年通っている。
寄席の最後に行われる余興全般が「大喜利」と呼ばれていて、テレビ番組の笑点でお馴染みの、司会者が出すお題に対して居並ぶ落語家が回答する演芸だけを指すものではない。これ以外にも、踊りを披露する高座舞いや楽器演奏や鹿芝居など、大喜利には様々な芸がある。そして、今回の茶番も伝統的な大喜利の一つである。
馬生一門贔屓を中心に、この茶番の常連客も多い様で、客席の埋まり具合も良い。出演メンバーも、バラエティさに富んでいて、寄席ならではの雰囲気を感じられる芝居となっている。
寄席で見られる茶番というのは、幕末から明治にかけて寄席で太神楽の神楽師たちが披露していた歌舞伎のパロディであり、面白可笑しく演じていたコントのようなものが発祥。それが現代の寄席では、落語家が中心となって、一座を組んで茶番を披露している。
この茶番の演目自体は、元々芝居の演目としてあるものを題材にしたもの。当時の太神楽の神楽師たちが公演した茶番の記録を残していて、それによって演芸として現代に引き継がれている。今回の茶番にも太神楽の翁家和助さんが出演され、当時の茶番を再現することに尽力されているようだ。
今回の演目は「塩原太助一代記」の中から「青との別れ」の場面。実在の人物である塩原太助をモデルに三遊亭圓朝が「塩原多助一代記」を落語にして、その後には歌舞伎の演目として上演された。まさに歌舞伎が元になっているパロディなのだ。そして、この演目は浅草演芸ホールの茶番としてもお馴染みの演目。
主役の太助は、座長の馬生師匠が演じることがお約束。その他の配役は、日によって変わっているようだが、長年かけ続けた演目なので、どの役になっても、皆さん上手く演じることができるようだ。この日の馬治師匠は、口(くち)三味線の義太夫語り。もっともらしく、てきとうな義太夫が楽しい。本物っぽい雰囲気を出しているのが、さすが。
俳優陣も真面目にふざけていて、素人芝居の下手さを上手く表現。適当に手を抜いて素人芝居を演ると、グダグダになってしまう。ここは、プロの芸人らしく、真剣に下手な芝居を演じているのだ。たまに、その真剣さがハプニングを生み、アドリブが炸裂して演者自体が噴き出す場面もあり、そんな微妙な上手下手具合が楽しいのだ。
我々世代は、子供のころにドリフターズの「8時だョ!全員集合」に夢中になった世代。大掛かりなセットや小道具を使って、馬鹿々々しいコントをメンバー全員が真剣に全力で取り組んでいる様子に魅せられて、毎回テレビにかじりついていた。茶番を観ていて、このドリフターズの番組が、ふと頭に浮かんだ。茶番とは、規模も内容も手法も違うものではあるが、馬鹿々々しいことに真剣に全力で取り組む姿勢が観客の笑いを生んでいるという共通点を感じるのだ。演者が照れてしまっては、観客は白けてしまう。ここは芸人さんたちのプロ意識を感じる場面なのだ。
今年も皆さんの元気な茶番を拝見できて、満足の寄席だった。
番組
前座 三遊亭歌ん太「子ほめ」
金原亭小駒「元犬」
柳家わさび「ぼたもち小僧」
ネットで拝見した、この演目に関する書き込みから抜粋。
国立劇場開場50周年記念「圓朝に挑む!」でわさび師匠が披露したのが、圓朝作品「日本の小僧」と「西洋の丁稚」という小噺を組み合わせた「西洋の丁稚と日本の小僧」と題した演目。
のちに、わさび師匠がこの演目の中から「日本の小僧」だけを切り離して再構成したのが「ぼたもち小僧」。わさび師匠の新作派らしい創作力が活かされた噺で、古典落語の雰囲気も漂い、寄席向きの面白い噺に仕上がっている。
ニックス 漫才
桂三木助「だくだく」
古今亭志ん陽「他行(たぎょう)」
初めて聴く噺。他行とは、外出するという意味。噺は、金明竹と似たような構成。骨董屋の店番を頼まれた松公は、他行で留守という断り文句を教わるのだが、馬鹿正直に答えてしまい、客をしくじるという筋書。
如月琉(きさらぎりゅう) 奇術
初めて拝見する色物さん。令和5年12月1日に落語協会に正会員として加入。
柳亭燕路「幇間腹」
桂文生「STV大失敗」
今年で85歳になられる。椅子に座っての漫談。シャンソンを歌って会場を沸かせる。年齢を感じさせない芸の力。
岡大介 カンカラ三線
この方も初めて拝見する色物さん。令和5年12月1日に落語協会に正会員として加入。
春風亭正朝「悋気の火の玉」
柳家小さん「替り目」
江戸家猫八 ものまね
三遊亭歌武蔵「支度部屋外伝」
柳家小満ん「宮戸川」
霊巌島の叔母さんが、伯父さんとの馴れ初めの昔話を延々と語るところが可笑しい。
仲入り
金原亭馬治「真田小僧」
ホンキートンク 漫才
古今亭菊春「善光寺の由来」
「お血脈」の前半部分のみを切り取った噺。
橘家文蔵「手紙無筆」
翁家社中 曲芸
金原亭馬生「稽古屋」
大喜利「茶番」「塩原太助一代記」から「青との別れ」
馬生 塩原太助
和助 青
菊春 円次郎
馬治 義太夫語り
馬久 悪役兄弟
小駒 悪役兄弟
かっぽれ 総踊り
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