見出し画像

落語日記 独演会でのゆったりした雰囲気の中で、十八番となりうる噺をネタ下ろしした馬治師匠

第21回 馬治丹精会
1月13日 江戸東京博物館小ホール

番組

金原亭駒介「狸札」

ロケット団 漫才

金原亭馬治「替り目」

仲入り

金原亭馬治「ねずみ」(ネタ下ろし)

立上げのときから裏方としてお手伝いさせていただいている、金原亭馬治師匠主催の独演会。
前回の第20回は、コロナ禍にあって中断していたのを、1年7ヶ月ぶりで昨年9月に再開した。その後、一旦、新規陽性者の数も下がってきて落語会も活発になりだした中、オミクロン株という感染力の強い変異株の登場で、東京都の新規陽性者数もうなぎ上りで増加し、首都圏でも「まん延防止等重点措置」が検討され始めた。
そんな不安な状況下での開催なので、予約のキャンセルが相次ぐなか、7割強の入場者となった。大々的な告知を控えていたが、こんな状況下でも常連さんやご贔屓さんが集まり、本当に有り難い限り。
当日は受付や裏方作業で、席に着いての観賞は出来なかったが、換気対策で開けっ放しの扉の後ろから、ときどき拝見。通しては聴いていないので、今回の観賞記は部分的に聴いた感想。

駒介さんは、楽屋仕事もきっちりこなす真面目な前座さん。色々とお手伝い頂いて助かった。
ゲストは、漫才のロケット団。時事ネタを毒舌で切りまくる漫才は爆笑の連続で、客席を一気に暖めた。寄席でお馴染みのネタ、そんな言葉は山形では昔から使っている、は私の好きなネタ。セキュリティからアルギニンまで聴けて、私的には大満足。お客さんも喜んでいたようで、ひと安心。

この日の馬治師匠は仲入りを挟んで二席。常連さんを前に、ネタは馬治ファンにとっては珍しい演目。「替り目」は私も初見。随分と久しぶりの蔵出しのようだ。
もう一席のネタ出しの「ねずみ」はネタ下ろし。この噺は、同期で仲の良い入船亭扇蔵師匠から習ったそうだ。ということは、三代目三木助師、九代目扇橋師と続くこの噺の本流に繋がる扇蔵師匠から引き継いだ由緒正しき系譜の「ねずみ」なのだ。
この日の馬治師匠の「ねずみ」も、端正で丁寧な印象の本寸法な一席。特に年齢を重ねて来たからこそにじみ出ている老成感が、登場人物のキャラクターに良い効果を与えていると感じた。落ち着きのある大人感ある甚五郎。悲惨な境遇にも諦観の境地で淡々と語る宿屋の主人。生意気な息子卯之吉の幼さが、対比される良いアクセントとなっている。
また「替り目」の酔っ払いの表現力も、同じく年齢を重ねたからこその味わいを感じるのだ。落語家にとって、精進を重ねながら年齢を重ねていくことは、利益になることの方が多いはずだ。

ご自身の会ならではのマクラが、長めで客席にも受けていた。友人の感想も、マクラを褒めていた。寄席や他のホール落語会では、馬治師匠は定型のマクラが多い。この日のような、ご自身の経験談や思い出話などを自由に長めに語るマクラは、なかなか聴けない。独演会であるこの会ならではのマクラなのだ。
このマクラで漂うゆったり感を、他の出番でも発揮できれば、馬治師匠の評価がぐっと上がるに違いない、改めてそう感じた会だった。
次回は、3月24日。その頃には、オミクロン株の感染状況がピークアウトしていることを祈らずにはいられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?