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落語日記 いつのまにか中堅の域に入ってきた皆さんの恒例の会

新春寄席 ~2024RAKUGOもんすたぁずスペシャル公演~
1月21日 江東区古石場文化センター 大研修室
最近はちょっとご無沙汰しているが、毎回楽しみに通っている落語会である「RAKUGOもんすたぁず」が、毎年正月にゲストを迎えて特別公演を開催している。今年は、その正月特別公演が6回目の開催となる。
毎回楽しみなのが、ゲストの出演。メンバーの三朝師匠の師匠である春風亭一朝師匠が、この日のゲストとして初登場。昨年に引き続き、今年も楽しみに出掛ける。

古今亭松ぼっくり「金明竹」
志ん陽師匠の弟子で、この会のレギュラー前座。しばらくぶりの拝見で、その成長には驚かされる。前座さんの成長と変化は大きい。

古今亭志ん陽「ぞろぞろ」
続けて松ぼっくりさんの師匠が登場。まずは、この会の趣旨説明。通常は、自分達と会場の古石場文化センターの共催だが、この新春寄席だけは、会場の単独主催。なので、いつものレギュラーの会と構成が違い、オープニングトークや抽選会が無い。会場のセッティングなどもやってもらえる。自分たちもゲストのような気分、そんな何となくいつもと違う雰囲気が出演者の皆さんたちにはあるとのこと。観客としても、いつもと異なり豪華なゲストがあり、少し華やいだ正月気分ではある。
そんなマクラから、浅草寺の裏っ手は田圃だったという話。さて廓噺かなあと思っていると、昔話の民話のような本編が始まる。長閑でのんびりした気の好い老夫婦の会話が、志ん陽師匠の雰囲気と柔らかな語り口にドンピシャはまる。商売繫盛の御利益がある噺、まずはお目出度い噺で盛り上げる。

春風亭三朝「雑俳」
マクラは、一年は早いという実感がこもったお話。先日年越ししたかと思ったら、もう一月も終盤。毎年あっという間に一年が過ぎるという実感は、私も含めて年齢層の高い客席には、納得のお話。そんな共感するマクラから、本編は言葉遊びの楽しい演目。
和歌俳諧から、徘徊の洒落はお馴染みのクスグリ。ここから、ご隠居のウンチクや軽妙な言葉遊びが始まる。
この噺は、観客にとっては、リズム感があって心地良く聴けるし、駄洒落や凝縮された小噺みたいに、間髪を入れずに笑いに繋がるので、聴いていて楽しい噺ではある。しかし、演者にとっては、登場人物のセリフと違って、川柳や狂歌を一言一句言い間違えないように口演する必要がある。ごまかしの利かない、かなりの修練と記憶力が必要な難易度の高い演目なのだ。この点、この日の三朝師匠はさすがの一席。言葉遊びを丁寧にかつ流暢に聴かせる隠居と、間抜けなオウム返しをする八五郎との対比が見事で、大いに会場を沸かせていた。

春風亭一朝「蛙茶番」
仲入り前は、ゲストの出番。いつもの「一朝懸命」を古石場で聴けて、妙に嬉しくてテンションアップ。マクラでは、まずこの会のレギュラー四人のことを持ち上げる。この会の四人は、将来の落語界を背負って立つ皆さん。この会のお客様は、古石場で可愛がっていたと言えるのですよ。こんなヨイショをする一朝師匠も初めて。
続いて、歌舞伎の大向うの掛け声のお話。落語家は住まいの地名を呼ぶという話に移っての小噺は、得意の芝居噺を予感させるもの。ここから、私の期待度がますますアップ。
昔は素人芝居が盛んだった、と本編へ。いつもながらの、切れ味と威勢のいい江戸っ子の若者の馬鹿騒ぎが楽しい一席。その江戸っ子の代表が、威勢が良過ぎるお調子者である建具屋の半公。思考や行動が極端に振り切っているが、我々の常識からちょうど良い具合に突き抜けている。ちょうどいい馬鹿々々しさ、小気味よさ。この匙加減が一朝師匠は見事なのだ。
半公が女の子の前で下半身丸出しになる場面は、お馴染みの場面だが、こんな下品な場面でも爆笑させてくれる一朝師匠。ここはザッツ落語ともいえる名場面だと思う。こんな下ネタのバレ噺を、軽妙な滑稽噺として何気に披露してくれる一朝師匠、大好きだ。
そして、一朝師匠の高座を聴いていつも感じるのが、本寸法な言葉遣い。今回も最近は意味が変わってきたり誤用されている言葉の「役不足」や「玄人はだし」を本来の用法できっちり語ってくれた。さすが、時代劇などでセリフの監修をされている一朝師匠だ。
  
仲入り

柳家燕弥「干物箱」
燕弥師匠を拝見するのは久しぶり。マクラは、この新春寄席も今回で6回目となるが、今までのゲストでさん喬師匠やこの日の一朝師匠の登場はあるが、燕弥師匠の師匠である権太楼師匠は未だ登場していない。お願いすれば出てもらえるとは思うが、人気者だけに正月二之席開催中だったらなかなか難しいかも、そんなお話。この師弟共演も楽しみなので、実現を楽しみに待ちたい。
本編では、勘当は怖いが何としても親父の監視をかい潜って吉原に行きたい、そんなふざけた了見の若旦那を燕弥師匠が好演。若旦那が頼った貸本屋もいい加減。若旦那の声色を真似るところまでは良かったが、落語によく出てくる一人妄想による一人相撲。これはバレるに決まっている。そんな貸本屋も、軽くフワフワした感じで見せてくれた。
久しぶりに拝見した燕弥師匠、軽さと本寸法な芸は、主任興行も間近いと感じている。

柳家小傳次「井戸の茶碗」
この会の番頭役じゃないかと思われる小傳次師匠が、今回の主任を務める。この日は運営が会場側なので、いくらかは負担が少なくて、ほっとされているかも。
マクラは、13年前に買ったテレビが昨年に故障した話。同じ型が中古品で3万円で買えたとのこと。このリサイクルショップの話から屑屋の話へ。ということは、あの噺だ。
いつもの会と違って、この新春寄席は皆さんネタ出しは無し。新春寄席は、皆さん何を掛けるかがお楽しみなのだ。さて、主任の一席は何だろうと期待していると始まったのが、なかなか主任らしいネタ。小傳次師匠では、おそらく初めて聴く。
始まった本編は、きっちり定番を崩さない本寸法な型。小傳次師匠の古典は正統派なのだ。人物描写も分かりやすい。間に入って苦労する屑屋の人の好さも心地良い。
噺の流れに身を任せる楽しさを味わいながら、ゆったりとした時間を過ごせた一席。主任の一席が新春寄席に相応しいお目出度い演目で、ご常連さんも満足されたことだと思う。

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