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落語日記 独自の道を模索している馬治師匠

第24回 馬治丹精会
9月12日 日本橋社会教育会館 ホール
馬治師匠主催の独演会、裏方としてお手伝いさせていただいている会。前回からこの会場に引っ越しして、今回が二回目。丹精会の会場としても馴染んできた。この日も常連さんが大勢来場されていた。
今回のゲストは、動物ものまねの江戸家小猫先生。来年3月より5代目江戸家猫八を襲名されることが決まっていて、なかなかにタイムリーなゲスト。
この日も、受付等の裏方仕事の合間に、ロビーに流れるモニターの音声とときどき会場の扉の脇から覗き見で拝聴。どの演目も通しでは聴けていない。なので、今回の日記も部分的に聴いた感想。
 
まずは、前座の駒介さん。初めて聴く真田小僧。地道にネタ数も増やしているようだ。
続いてはゲストの小猫先生の登場。まずは、江戸家の伝統芸のウグイスをひと鳴き。ロビーのモニターからも響き渡る。その後、次々と得意の動物の鳴き声を繰り出す。
今回の猫八襲名から、この独自性あふれる見事な伝統芸を、これからも承継し発展させていくという強い覚悟を感じるのだ。寄席ファンとしても応援していきたいと思う。
 
仲入り前の馬治師匠の一席は、十八番中の十八番の「井戸の茶碗」。と言うことは、ネタ出しでネタ下しの「化け物使い」はトリネタで披露ということ。これは、ネタ下しをじっくり落ち着いて語りたいということだろうから、自信を持って臨んでいる証しなのかもしれない。
じっくりと座席で聴けなかったのは非常に残念だった。客席の脇からときどき覗き見して受けた感想は、この噺の稽古を付けてもらった橘家圓太郎師匠の語り口そっくりだったということ。特に化け物に対する命令の口調は、圓太郎師匠そのものと言ってもよいくらいだ。これを聴いて、この噺に馬治師匠の独自色を出して自分のものとしていくのが、今後の課題かもしれないと、馬治ファンとしては感じた。
この噺は客席では受けていたし、素人目から見て合格点の高座だとは思う。しかし、終演後の様子から、馬治師匠にとっては満足のいく出来ではなかったようだ。
ネタ下しから噺の進化は始まる。この初演の悔しさをバネに、馬治色に染め上げたご自身のものとするために、この噺を磨き上げていくことだろう。その進化を楽しみに追い続けたい。
 
馬治師匠は、昨年に続いて浅草演芸ホールの10月31日の余一会「僕らはみんな生きている」に出演が決まっている。この会は古今亭志ん輔師匠プロデュースで、競技方式で優勝を決める会だ。今回この会はネタ出しとなっていて、馬治師匠は「化け物使い」で出演されることがアナウンスされている。この噺に再挑戦する馬治師匠にとって、丹精会のリベンジとなるかどうか、注目されるところ。対戦相手は昨年と同じく、さん助師匠、小八師匠、おさん師匠の三人、強敵が揃っている。
この会は平日昼の部なので、応援には行けそうにない。場外から祈るしかないが、この日の悔しさを糧に頑張って欲しいと思う。

金原亭駒介「真田小僧」

江戸家小猫 動物ものまね

金原亭馬治「井戸の茶碗」

仲入り

金原亭馬治「化け物使い」

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