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眠れぬ夜には意味がある

日曜日、夜の11時半。1時間前から目をつぶっているのに、うつらうつらともしない。そして、とりとめもないことが浮かんでは消えていく。永遠にも感じるが、人生においては一瞬のルーティン。

そんないつも通りを繰り返していたら、急に脳に指令がくだされた。これは常にはないことだった。頭のてっぺんに住んでいるであろう長官が低音ボイスを発する。

きみはなにか忘れてはいないだろうか。大切なことを。


探せ。


今すぐ探せ!!


頭のペダルが急速に回転を始める。何を探していいかヒントもくれないのに鬼だな、眠いのに、と少し彼に対してむくれながらも思考を巡らせる。

やがてこれだ、というものを探し当てた。スロットでチェリーが3つ並ぶような感覚。日中ならば楽しいかもしれないが、寝起き直後にはちょっと辛い。

急いで起き上がり、おやすみモードのiPhoneを叩き起こす。カメラロールから最近の写真を探す。確か先週の日曜日に撮ったあの紙っきれ……。

過去の自分が書き殴ったメモには、確かに10月4日の日付と推しがゲスト出演したラジオ番組名が記されていた。今は10月11日。しかも間もなく12日になろうとしている。消えてしまった? ああ、絶対radikoで聴こうと思っていたのに、もう1週間経ってしまったのか。軽く絶望的な気分になる。もう無理だろうか。無理だろうな。

あきらめきれず、メモに残されたよく知らない番組の名前を検索する。すぐにホームページは見つかった。そして「聴収可能日時:10月11日28時50分」の文字も。今はたしか12時前だから、まだ23時台ということ。

間に合う!! とガッツポーズし、慌ててイヤホンを探した。さすがに家族が寝静まる部屋の近くで直に聞くわけにはいかない。それくらいの分別は一応自分にも残されていた。

しかし、日頃の行いのせいか目当てのものが全く見つからない。3分くらい捜索して早々にあきらめ、プランBを決行した。場所を移動して聴く。

別の部屋の隅っこで画面を光らせながらラジオを流し始める。座敷童子のように羽毛布団にくるまりながら声を浴びる。その時間はとても優しかった。本当に間に合って良かった。このまま5回くらいリピートしたかったが、次の日が仕事なので1回+αでやめておく。

もし、この日熟睡していたらきっと気づかずに放送は終了して、後で思い出した瞬間のたうち回っていただろう。今までの経験から容易に想像がつく。もしもし長官、今日は働いてくれてありがとうございます。感謝の舞を捧げますから、どうかまた活躍してください。できれば日中に仕事してね。


私が必死で聴いたラジオはこちらです。



こちらの企画に参加しました。初でどきどき。


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