スローな動きで練習してみる

手技療法も慣れてくると手際が良くなり、パッパッと操作できるようになります。
そこまで習熟してきたら、あえてスローな動きで練習してみるのもお勧めです。

通常の1/2~1/3くらい、ゆったりとした太極拳や気功のようなイメージで操作してみてください。
その時に大切なのは、ゆっくり動かしながらも自分の身体の動きと感覚と、軟部組織の反応を捉え続けるというということです。

なかなか難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

演奏でもアップテンポな曲は勢いでごまかせたりするけれど、
スローな曲は音がずれたらすぐにバレるから難しいところがある、と聞いたことがあります。
(相応のレベルの方が言えることだと思いますが😅)

手技も一見手際が良さそうに見えて、雑になってしまっているところがあるかもしれません。
ふつうのマッサージのように手順通り進めていく場合、慣れてくると組織の反応をみないだけではなく、思考も停止してルーチンワークに陥りやすいもの。
スローな動きをすると、そんなごまかしが利きにくくなります。

自分の身体の動きと感覚を観察しましょう。
手の向きと足の向きは楽な位置になっているか。
軟部組織が手を押し返してくる感覚と、床が足を押し返してくる感覚は釣り合いが取れているか。
ゆっくり動かす中で、腰や背中が痛くなるような緊張を作り出していないか。

軟部組織の反応については、手で押さえたときだけではなく、手を離すときの弾力性もモニターしてみましょう。
私が組織のリリースを判断する時、押さえたときの伸びや緩み具合だけではなく、離すときの戻り具合も参考にしています。

施術中に「筋肉が『おかわり』と言っています」とか「後ろ髪を引かれた気がしたのでもう一度」と私が言ったときは、
手を離し始めた瞬間の手応えに違和感を持ち、取り漏らしがないかどうか調べ直しています。

この、離し始めた瞬間の戻り具合を感じるのは、スローな動きで練習するとわかりやすいです。
離し方も指を浮かした時と、肘を引いたときと、腰を引いたときでは感じ方が異なるのでそれも意識してみましょう。

オルガンの演奏では、鍵盤からの手の離し方で音色が変わるので「離鍵」として重視されているそうです。
手技も手の離し方により、組織の状態だけではなく、相手に与える印象も変わるので大切だと私は思っています。

ここまでこだわらなくてもある程度の仕事はできるけれど、
ここまでこだわることで見えてくる世界もあります。
興味や必要性に応じて練習するとよいでしょう。

何はともあれ、ウェイトトレーニングでは重さ・速さ・回数を変え、目的に応じていろいろな刺激を身体に加えていきます。
手技の練習をする時もいつも同じではなく、強さ・速さ・テンポ・持続時間などを変えてみるのもひとつの方法でしょう。

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