ヘルニアを押し戻す
以前、腰痛の相談でみえた女性がおっしゃいました。
「これまで腰痛になった時は、整体の先生がヘルニアを押し戻してくれて楽になっていたので、それをやって欲しいです👩」
きっと20代の頃の私なら、真っ先に
「ヘルニアは手で押し戻せるものではありませんよ。
その先生の言っていることは間違っています」
とお話ししたはずです。
それは、医学的には正しいことですが、医療として正しいとは限りません。
その方が、ヘルニアは整体で押し戻せるものという信念を強く持っていたとしたら、表面的には取り繕っていたとしても内心拒絶される可能性も高いでしょう。
心を閉ざされ関係が途切れてしまっては、働きかけようがなくなります。
慢性機能障害の臨床は、結果的には生活習慣の改善に結び付けるもの。
そのために必要なのが、クライアントがどのような世界観を持って生活しているかを知り、そこに目線を合わせていくことだと思っています。
もちろん危険性が高ければ向き合って指摘しますが、そうでなければ一旦はその見解を受け入れ、一緒に散歩をするつもりで横に並んでしばらくついていく。
そして、生活への適応という目指すべきゴールをチラ見しつつ、現状から一歩踏み出すためには何か必要かを考え、より適応的な状態へ徐々に(どさくさ紛れに)軌道修正をはかる。
当初は「ヘルニアを押し戻す」という考え方は、直ちに大きな問題にはなりにくそうなのでいったん脇に置いておきました。
紆余曲折を経て症状の改善にと安定に伴って信頼関係ができ、クライアントの受け入れ準備が整ったと判断した上で、それとなく ”ヘルニアを押し戻す” ことについて伝えたら「そうだったんですね」と納得されたのでした。
ところで、相手の目線に合わせるというのは、セラピスト自身が自分の軸をしっかり持っているからこそ出来ることで、そうでなければ相手に振り回されて、コントロールが難しくなるかもしれません。
単なる御用聞きではなく、あるべき論の押し付けでもない。
より適応的な段階へ導くことを念頭に置きながら相手に合わせるというのは、セラピスト自身が『軸と力を備えたしなやかさ』を持っている必要があり、なかなか簡単なことではないと思います。
私も日々修行です💦
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?