ワクチン接種後の頚部痛

「ワクチンを打って5日後くらいに、モデルナアームになって腕の腫れと痛みが出始め、その後から左の首すじから背中が痛くなって2週間以上良くならず、動かすと痛いし夜も眠れないんです」
という相談でみえた男性がいました。

受診時に発熱はなく、腕の腫れも引いています。
身体を拝見すると、全身の姿勢バランスなどはひとまず置いとくとして、左首の筋肉の一部が強く緊張し、硬くなっていました。
(中斜角筋・肩甲挙筋・半棘筋などなど)

触れてみた組織の質感から、その硬さは最近のものではなく、もともと以前からコリとして存在し、急に緊張が強くなって症状として出てきたような感じ。
コリを手で緩めると、動かすと痛いという症状は良くなりました。

男性はホッとした様子を見せながらも、何か思うところがあったのか質問をされました。
「これもワクチンが原因なのでしょうか?副反応とか後遺症とか?」

ひと呼吸おいて、私は答えました。

『以前、ペットのネコと一緒に寝ていた方が寝違えでいらしたのですが、
その寝違えの原因をネコだけのせいにするのは酷な話じゃないですか』

「・・・ええまぁ」

『ネコはきっかけのひとつかもしれませんが、どちらかというと、ネコに気を遣って変に身体を緊張させた影響が大きいでしょう。
それに、もともと一緒に寝ていたので、なぜそのタイミングで寝違えたのかも考えないといけません。
不自然な寝相で疲れが徐々にたまってきたのか、生活の中でいろいろ無理をかけてきたのが限界を超えた可能性だってありますよね。』

「そうですね」

『今回の首から背中の痛みも、モデルナアームで腫れたのがきっかけかもしれません。
でも首のコリは接種前からあったはずで、それが打った後の腫れと痛みでさらに強まり、腫れが引いても緊張が残って痛みも続いた。
そんな、ストーリーも考えられるかもしれませんよ。
首のコリそのものは、仕事や生活の疲労などから蓄積されてきたものですし。』

「確かに」

『ギックリ腰でも、ちょっと振り向いたり、少し前かがみになっただけの動きで起きるというのは、疲労の蓄積がベースにあって、限界を超えたタイミングでギクッとなることが多いです。
今回の首の痛みも同じようなものではないかと私は考えています。
そもそも、ワクチンが直接的な原因で症状が出ていたなら、
手でコリをほぐしただけで楽になったりしないと思いますよ』

「なるほど、そうですね(笑)」

『何でもかんでもワクチンのせいにしたら、ワクチンが可哀そうじゃないですか(笑)』

ワクチンの話題は今が旬なので、何もしなくても情報が向こうからやってきます。
実際に症状が出ていて不安があると、副反応などの情報に飲み込まれることだってあるでしょう。

その結果、合理的で適応的な判断が難しくなり、不安にさいなまれて
安易な結論付けをしてしまうことがあるかもしれません。

何が正解で何が不正解か。
百家争鳴の現状に加えて、フェイクニュースに陰謀論まで飛び出すような中で、何とも言えないこともまだまだ多いでしょう。

そのような中で私たち治療家が行うべきことは、きちんと評価したうえで、適応となる機能障害の改善によりクライアントの苦痛を和らげることにえ、
考え方が固定されがちな状況から一歩抜け出して視野を広げさせ、不安を和らげるための手助けをすることではないでしょうか。

場合によってそれは、症状そのものへの対処よりクライアントにとって意味のあることかもしれません。
とはいえ、症状を改善させないと説得力がないので、本業の仕事をきちんとするのは大切ですが💦

昨日、その方の奥様がいらっしゃり、あれ以来首の痛みも良くなって夜も眠れているとのことでした。
まずはヤレヤレ😅

※ このケースもひとつのエピソードで、同じ経過・症状でもすべてに該当する訳ではありません。

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