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宇都宮ブレックス〜カルチャーの伝道師〜

幼少期、私は祖母に脚下照顧という言葉を教えて貰い、今でも大事にしている。自分自身が歩む道を外れそうになった時、この言葉を思い浮かべる。これは祖母が私に受け継いだ言葉だ。

私も小学生〜大学までスポーツをしてきたが、スポーツの世界でも同じことが言える。大事にする考えがあれば苦しい時に支えになる。子供ながらに今月の目標は〇〇と定めたものだ。プロチームが毎年チームスローガンを掲げるのもそれが一つの理由だろう。

さてBリーグで強豪と呼ばれる宇都宮ブレックス。このチームには強いチームカルチャーがある。このチームの基盤で、苦しい時に助けてくれる考え方だ。
それはBREX MENTALITYと呼ばれるもので、一言で『泥臭さ』とも表現される。 

これはチーム在籍16年目の田臥勇太が理想とするバスケで、2015年に放送されたグラジオラスの轍にてこう語っている。

「個人的には、泥臭くても良いと思ってるんですよ。ブサイクでもいいと思っていてチームの勝ち方だったりは。ただ気持ちが入っていて、みんなで毎試合勝ちを勝ち取る戦いをしていきたい(Xはこちら)」

この泥臭さで表現されるBREX MENTALITYを噛み砕くと3つの言葉になる。
①『粘り強いDF』
②『献身的なリバウンド』
③『ルーズボールへの執着心』
いずれもブレックスの象徴的なプレーであり、これはファンも理解している。

実際に選手はこのBREX MENTALITYをコート上で示すことが求められ、体現できない場合プレイタイムが獲得できないのがブレックスの伝統。
あの比江島慎ですら、DFが理由で移籍当初は6thマン起用になる程だった。

BREX MENTALITYは田臥勇太がチームに根付かせたわけだが、これは後輩たちへ継承されている。つまり田臥は、BREX MENTALITYというカルチャーを伝えた初代【伝道師】なのである。

その田臥の想いを受け継ぐ筆頭は渡邉裕規。バイスキャプテンである彼は、田臥勇太の意志を引き継ぐ第一人者である。コート内外でチームを鼓舞し、リバウンド・ルーズボールに飛び込む姿勢は年齢を重ねた今も変わらない。

そして渡邉はBREX MENTALITYというチームカルチャーを伝える2代目の【伝道師】になった。
田臥が渡邉に伝えたカルチャーは、次は渡邉が比江島を始め年下の選手たちに伝えている。そう渡邉も現在進行形で2代目の【伝道師】の役割を全うしている。

ここで問題が生じる。
田臥→渡邉の後のカルチャーの【伝道師】がいないわけだ。これは会社で言うと後継ぎいないぞという大問題。
後継ぎがいないということは、チームの核となる考え方が失われかねない。昨日の北海道とのゲームを見ても明らかだった。ハイライト

正直、田臥・渡邉も現役でいれる時間は少なくなっている。ブレックスのカルチャーを下の世代に受け継ぐ【伝道師】を探さない限り、ブレックスの強さの根源は失われるだろう。早急に3代目【伝道師】を探さなくてはならない。

しかしながらブレックスは若手とベテランのみで中間層がごっそり抜けている。またBREX MENTALITYを身につけるには少なくとも2〜3年は必要だろう。これはかなり難航する予感だ。候補者などはまた別の機会で話したいが、個人的には高島推し。

最後に、昨日は北海道に負け、連勝が21で途切れた。
まず今日の試合で、BREX MENTALITYはコート上で示されるのか。それともBREX MENTALITYは薄れ、言霊だけが残るようになるのか。今日の試合が分岐点なのかもしれない。

(補足)このカルチャーの【伝道師】は、個人的にはコート上にいて欲しくて、田臥・渡邉がコーチになってくれる可能性もあるが、コート上でBREX MENTALITYを示す人がいる必要があると考える。
今年の優勝も強く望んでいるが、Bプレミア開幕まではあと3年。この3年がブレックスの未来を左右する。
Bリーグ初年度優勝時の田臥勇太は36歳、奇しくも3年後のBプレミア初年度の比江島慎は36歳を迎える。何らかの運命に導かれたこの年に優勝を狙うためには、カルチャーの伝承が必要だ。ともかく暖かくも厳しく見守ろうと思う。


(北海道戦の後の追記)


序盤からエナジーが溢れ非常に気持ちが良い展開に。途中点差を詰められる場面がありつつも引き離し連敗を回避した。もっとやれるとは思うが、選手が気迫を見せてくれたことに感謝したい。

昨日は1日にして天国から地獄へと落ちたかのような経験をしたブレックス。やはりチャレンジャーの立場で相手に立ち向かう姿がこのチームは似合う。これも泥臭さの一つなのかもしれない。

前に述べた【伝道師】探しはかなりの難題だ。しかし意識を変えていくことは出来る。今日は【伝道師】探しの新たな一歩になったに違いない。

最後に、毎年感じることだが、シーズンは頂に向かうロープウェイのように右肩上がりにはいかない。毎年乱高下を繰り返すジェットコースターのようなシーズンが当たり前なことに気づかされる。
実際に全てが上手くいくチームより、浮き沈みを繰り返すチームに心が揺さぶられてしまうのは何故だろう。これは人生も同じだ。

そしてRS最終盤に入り、1ヶ月後にはCSが迫る。今年の決勝の舞台は横浜アリーナだ。横浜桜木町のロープウェイからの夜景は綺麗で美しいが、コスモワールドのジェットコースターはスリル満点でよりワクワクするはずだ。
私はそんなスリル満点でワクワクが絶えず、夜景とは程遠い泥臭さを持つブレックスをこれからも応援したい。

頂上から高みの見物をしていたブレックスは、高い頂から落ちた。しかしその分、再び這い上がるバネはどこよりも大きいはずだ。泥臭さが溢れるチームだが、その分優勝後に見える景色はどこよりも綺麗に違いない。

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