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日記(2023.12.23)

 渋谷で映画を観てきた。

 中島良監督の『死が美しいなんて誰が言った』という作品。
 公式サイトによれば、生成AIとモーションキャプチャーの技術を活用した世界初のアニメーション映画とのこと。
 ミュージカル『ルームメイトと謎解きを』にご出演だった長江崚行さんが主人公の声優をご担当されると知ったことがきっかけで観にいった。「メイ解き」から本当に自分の世界が広がっているな、という気がする。

 本作の舞台は、ゾンビウイルスが蔓延した世界。
 感染者として「壁」の内側に隔離されて生きる少年・レイが主人公で、序盤から濃厚に「死」の空気が本編を彩っている。
 そしてゾンビに病院が破壊された夜、レイの妹・ユウナが「壁」の外を目指して姿を消す。レイは主治医のリカとともに、ユウナを追うが――。
 というストーリー。

 内省的な少年が世界の不条理に直面して蹲る様は『新世紀エヴァンゲリオン』のようでもあり、また「壁の内と外」が存在する世界は『進撃の巨人』を思わせもする。そんなふうに名作アニメ/漫画からのインスパイアも感じつつ、ゾンビとの格闘やカーアクションには外国映画の香りがする。
 明確にどういう文脈に位置づけられると言いにくいような不思議なエンタテインメントでありながら、根底にあるテーマはとてもまっすぐなものだと感じられた。人間たちの「生」への痛切な願い。
 サブカルチャーはときに「死」を抒情的に美しく描いてしまうことがあり、本作の外観もどこかそんな「美しい死」を連想させる手触りがあったが、(タイトルからも明らかなように)そのアンチテーゼになっているのが興味深かったし、素敵だなと思った。
 長江さんはじめ、ご出演者の皆様のお芝居も熱く、胸に迫った。

     ◇

 それにしても、渋谷の街はすごく混んでいた。クリスマス直前の土曜日というと、それは混むものか。
 渋谷はそんなに頻繁に行く街ではないけれど、じつは22日(金)も、大学時代の友達と渋谷で会ってご飯を食べた。書店の位置も把握し、少しだけ歩き慣れてきた感じがした。2日連続で行くと心持ちアウェー感が薄れて、歩くのも楽しかった。
 まあ、人の多い場所へ行く機会は本来であれば減らすに越したことはないし、ここから年末までは、しばらく家でおとなしくしたい。仕事もやらなくちゃいけないし……。

     ◇

 読書記録。
 短編集『ブラウン神父の知恵』の最初の1篇を読み終えたところで、今度は横溝正史『女王蜂』を読み始めた。
『女王蜂』は文庫で450ページを超える長編で、いま130ページ過ぎまで読んだところ。
 なんだか脈絡のない読書をしている感じがあるけれど、自分の中では理屈がある。
 G・K・チェスタトン、ジョン・ディクスン・カー、横溝正史の3成分が、推理作家としての自分には足りていないんじゃないのか?と思っているので、なんとかそれを補給しようとしている今日この頃なのだ。

 まあ、先行作品からの学習って、ゆっくりと自分の中に沁み込ませるものだから、付け焼き刃で慌てて読んだらすぐにものになると思っているわけではないのですが。
 でも、優れた先人の作品からひとつでも多くを学んでやろうと足掻くことって大切だよなあ、と思うわけであります。


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