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日記(2023.12.15)

 都内に朗読劇を観にいった。
 朗読劇だから「聴きに」いったと言うべきなのだろうか。でも、身体のお芝居もたっぷりあった劇だから、やっぱり「観にいった」と言えそう。

 場所は恵比寿。
 恵比寿駅で降りたのは初めてのことだと思う。恵比寿には、なぜか「少しお洒落な大人の町」というイメージがあったけれど、想像していたよりも親しみやすい雰囲気だった。もちろん東京だから人は多いけれど、それでも渋谷や新宿の忙しなさと比べれば落ち着いていて、安心して歩ける街、と感じた。
 ただ、お手頃なファストフード店が駅前に少なくて、予算よりちょっと高めのお昼(お寿司)を食べることになったので、そこは「お洒落タウン」のイメージ通りだったかも。

 恵比寿駅から徒歩3分くらいのところにある、「シアター・アルファ東京」が会場だった。

 朗読劇「夢から醒めない夢を見よ。」は、なのるなもない氏が脚本・演出を手がけた作品。なんと、出演者は日替わりらしい。
 観劇のきっかけは、ミステリ・ミュージカル『ルームメイトと謎解きを』ですっかりファンになってしまった小野塚勇人さんがご出演されると知ったこと。
 さらに小野塚さん出演回には、個人的にハマったテレビドラマ『君となら恋をしてみても』で主演をなさっていた大倉空人さんも出ていると聞けば、もはや観に行かない理由がないと思った。

(※ここからは劇の内容についての話です)

 本編は、正体不明の「とある男(演:大倉さん)」と、「とある女(演:松田彩希さん)」の会話から始まる。なんとなく、彼らが置かれている状況を匂わせつつも、はっきりとはしない。
 この謎めいた導入で「おっと、これはどういうことだろう」と思わされたところで、舞台が現代の東京に移る。
 役者の卓也(演:小野塚さん)と、サラリーマンの海星(演:松村龍之介さん)のダイアローグが続く。幼馴染で腐れ縁の彼らは30歳になり、人生の転機を迎えている。
 ふたりの会話劇は、しばらく大きな事件なく進んでいく。さりげない言葉の選び方や言い方に日常生活の体温が滲んでいて、リアルな親友同士の会話に耳をそばだてているような気分になる。それでいて、東京と田舎の価値観の違い、というような洞察も含まれていて、思わず考えを巡らせたくなる台詞もあった。
 そんな会話劇に引き込まれつつ、中盤以降は怒涛の展開も待っていて……。

 最後までのめり込んで観た。
 人生の転機を迎えるうえで意識される「夢を追うことのしんどさ」という話が出たときには、なんだか身につまされることのように感じたりもして。卓也役の小野塚さんの熱演で、とくにこのくだりには胸をつかれた。
 たびたび登場するフレーズ「夢から醒めない夢を見よ」も意味深で、全体として、「夢を見る」ことの甘美さと、ときにぞっとするような危うさを感じる作品だった。

 また、素人丸出しの感想で恐縮だけれど、「朗読劇って、面白い表現なのだなあ」と思った。
 アニメのイベントで声優さんがやる朗読劇は観たことがあるけれど、今回のように、「朗読劇」とちゃんと銘打たれて、すべてそのために舞台が作られている、というものは初めて観た。
 映像や音楽、小道具、椅子、そして出演者が手にしている台本さえも「仕掛け」となりうる、そんな自由さを感じた。
 ゴージャスな大道具がなくても、台詞だけですべての世界を立ち上げられるということの強み、というか。たとえば映像演劇だと、「豪華客船沈没」とか「怪獣による都市破壊」みたいなことを描こうとするとどうしても予算がかかるだろうけれど、朗読劇ならば、表現者の力量次第でそういう派手なものごとを最小限の小道具で描ける。
 ちょっと、小説に通じるような気もする。

 先月来、今まで触れてこなかった表現形式に触れるようになって、とても楽しいし、いろいろ発見があるなと感じている。

 

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