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漢方薬の服用方法についての話

薬局で服薬指導をして漢方薬をお渡しする時
よく聞かれる質問として、「食前だと飲み忘れることが多い」
といった相談を多く受けます。
「飲み忘れたら食後でも服用してください」とお答えするのですが
実際のところはどうなのかネットで調べていたら、
詳しい記事があったので紹介します。

漢方薬は食前で服用する必要があるのか

漢方薬の添付文書では「食前又は食間に経口投与する」
となっているものが多いです。
結論からお伝えすると
漢方薬は「食前又は食間」で服用しなくてはならいとは一概には言えないと考えられます。

漢方薬の飲み方は「煎じ薬の使用経験」をもとに決められているようで
漢方薬が日本で使われ始めた時に推奨されていた飲み方が食間、食前だった為にそのままの使い方を今も続けているようです。

また、過去の食間・食前の服用方法もそのタイミングの方が「吸収がいいに違いない」といった推測で決められていて実験データなどは無いようです。

つまり、漢方薬の飲み方は過去の使用経験をもとに決められ、その過去の使用経験は推測で考えられたものであり、明確なデータが有るわけではないという事です。

漢方薬を食前で服用するよくある理由

・漢方薬は、他の薬と別のタイミングの方が、相互作用が起こりにくい
・漢方薬に含まれるアルカロイドの毒性を消す(or吸収を促進する)
 為には、食前に服用した方がよい(胃酸がより酸性の為)
・食前に服用することで、腸内細菌で有効成分への変化を起こしやすくし
 効果が出やすくなる。
・漢方薬と食べ物を一緒に取ると相互作用が起きる可能性がある為

漢方薬を食前で服用する理由を説明するときは大体このような理由を説明する事が多いかなと思います。実際私もこういった内容を説明することが多いです。

ですが、これらの多くは服用方法ありきで後付けで考えられた理由かなぁと思います。また、過去にはこういった説明を製薬会社のホームページに掲載されたりしていたことがあるようで、それを見た当時の医療従事者が当時の記憶のまま説明したり、後輩へ説明するなどで上記の理由が語り継がれていた可能性もあります。

実際の研究データでも、食前・食後で薬効に大きな差はなく、上手く使い分けるのが良いといった内容のものがありました。
また、漢方薬は天然成分をもとに作られており、ロットごとで品質にバラツキが出やすいお薬です。効果の差が服用方法によるものなのか、お薬のロットによるものなのか分からない為、正確な検証は難しいと考えられます。

個人的には、1日に何回も薬を飲むことになると、コンプライアンスが下がったり、残薬が増えたりとあまりいい事はあまり無いと思うので、必ずしも食前で服用する必要があるとは言えないかなーと考えます。

また、八味地黄丸や牛車腎気丸のような地黄を含む漢方薬は軽度胃腸障害が比較的起きやすいですが、そんな時は食後に服用することで改善することもあるそうです。

結論

漢方薬は食前に飲んでも、食間に服用しても、食後に服用しても大きな差は無いと考えられる。
(※保険請求上、食後の服用で大丈夫という訳ではない。)
患者様の生活習慣や性格を確認して、その人にあった服薬指導を提案できるようにする事が大切だと思います。

漢方薬の服用法について、長年引っかかっていたものが調べることですっきりしました。より自信をもって、服薬指導を行うことが出来そうです。
これからも勉強を続けていきたいと思います。

参考:漢方薬は食前投与」を巡る迷信と真実(前編)(後編)
https://www.m3.com/clinical/news/1027650
https://www.m3.com/clinical/news/1027651

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