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組織運営の技術

組織運営の技術-品質保証

規則(手順と仕様)の明確化は作業ごとに記録を残すことを要求しますから、後日、第三者は記録をたどることで作業内容を検証することができます。第三者が作業内容を検証できることは、業務の品質が保証されている状況を示しています。一つひとつの作業は失敗もあれば間違いもあるかもしれませんが、記録がなければその検証はできません。すべての記録を残すことが組織運営の品質を保証する唯一の証明となります。
 こうした規則の文章化は多くの組織で確立されていますので、何をいまさらと感じられる方も多いと思います。しかし、運営上の間違いは毎日のように発生しています。たとえば、新型コロナウィルスのワクチンを間違って廃棄したとか、間違って接種したとか。感染者数を間違っていたので修正するとか。製造業では必要な検査をしなかったとか、検査結果を修正したとか。選挙の投票率計算で事前投票を二重に算出していたとか。間違いだらけの組織運営が今の実態です。
 なぜこうした間違いが頻繁に起きるのでしょうか。理由は二つあります。一つ目は作業手順が決められていても一つの作業から次の作業に移るときの複数人による確認がされていない、もちろん記録もされていないことがあります。担当者が現物確認をしたうえでいわゆる確認書(Inspection Form)に記入し、検証者に確認してもらうという品質保証(品質管理ではありません)の基本作業が抜けている場合が少なくないのです。
各組織の規則(手順と仕様)はマニュアルと呼ばれ、着実に守られるべきもののはずです。したがって、通常は作業がマニュアル通りに進められていますが、同じ作業を繰り返し行ううちに慣れがこうじて、マニュアル通りに作業を進めているふりをするようになることが少なくありません。品質管理さえも慣れによる作業手順の簡略化、手抜きとまでいかないまでも、が行われるようになっているのです。問題が発生するのは作業ごとに複数で現物確認するというマニュアルの手順が飛ばされ、確認が十分ではないときに発生すること多いようです。
二つ目は組織運営が上下関係で進められ、組織の上部がいい報告しか聞きたがらないという運営が伝統的になされているという背景があります。いい報告をするために、担当者が作業状況を繕って品質管理の記録(Test Report)を修正してしまうことがあります。上司に作業が順調であることを示すために記録を修正することに抵抗を感じなくなっているのです。経営者や上司にいい話を報告するために、部門全体がこの落とし穴にはまっている組織が後を絶ちません。経営者がいい経営状況を株主に見せるために報告書を改ざんすることさえ行われています。
 なぜこのようなことが繰り返されるかというと、組織内の運営満足を第一の優先事項として、第三者に対して組織運営の品質を保証しようという意識がないか必要と感じていないからです。個々の品質管理もさることながら、組織運営の品質が保証されていない組織は市場からはじき出されるばかりです。
 品質保証は組織運営の実態を表しますから、検証を繰り返すことで組織の進む方向を絶えず修正しながら進歩することを教えてくれます。以前と同じことをしているので間違いはないだろう(Should be OK)という解釈が組織の進行方向を誤らせたり、進歩を阻んだりします。組織運営の品質を保証しない運営が、今の3周遅れを招いた原因の一つとも言えます。長らく先進諸国で確立されている組織運営の技術を検討することは、運営品質を保証し遅れを取り戻すことにつながります。

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