II – 4 計画(Planning)

リスクの検討(Risk)
プロジェクトチームのスタッフは課題を期日通りに解決するために、計画に基づいて多くの作業に携わる。業務執行中は、計画時に想定していなかった事象が発生することがある。
想定外の事象はリスク(Risk)としてプロジェクトの行方を左右するので対応策は慎重に検討しなくてはならない。リスクにはプロジェクト開始前に目標が明確(定量的)に表現されていない場合に発生する定性的な事象もある。
しかし、多くの想定外事象は計画時に仮定を立てることにより想定内とすることができる。計画時に想定できるリスクはどのように対処すればいいのか対応策を立てておくことができる。
想定外の事象が発生する可能性があることを想定し、対処法を検討しておくことをリスクマネジメント(Risk Management)と呼ぶ。リスクマネジメントは将来の発生予測を想定して検討することから始める。計画時の過程に基づいてどれほどの事象(Scenarios)を想定しておくかがリスクマネジメントとして重要になる。
プロジェクトマネジメントを原則に従って遂行することで多くのリスクは避けることができる。
プロジェクトの行方を左右するようなリスク発生の原因に不十分なリスク分析がある。計画時にリスクを十分に検討しておけば、発生の可能性があるリスクは災害も含めて想定内にできる。自然災害などのリスク発生にあたり想定外の事象が発生したとして責任がないとするのは組織運営において適切とは言えない。
通常のリスク分析は考えられる項目をすべて網羅して詳細に検討する。具体的には各リスクへの対処策の検討において、経験に基づく判断が常識的であると解釈して、リスク分析結果を定量的に導く手法がとられる。
リスクには内的なリスクと外的なリスクがある。大きな内的リスクはその大きさが不明確で、作業量が確定できない定性的なリスクだ。たとえば、定性的なリスクとは組織にかかわることや組織の構成員に関わる問題が発生した時のことが考えられる。問題の影響がどれほどのものか数量的に想定できないリスクのことである。定性的なリスクの発生は否定できないので、発生した時の対応をどうするか手順を決めておくことが必要となる。定性的なリスクの発生も想定内としておくことが求められている。
外的要因によるリスクには戦争や暴動などのカントリーリスクと呼ばれるものや地震や火山の爆発などによる大規模な自然災害がある。自然災害のリスクはプロジェクトの関係者が直接に関与しておらず、プロジェクト計画時には想定はできても予見できないリスクである。プロジェクト遂行中に上部組織などの要求により目標が変わる(Move the Goalpost)場合のリスクもある。
リスクは仕事執行の場所、時期、資源、作業条件、日々の業務などの内的な理由で発生するリスクがあるし、業務の対外的な関係者による外的な要因で発生するリスクもある。仕事開始前の計画時に内的、外的を問わず想定できる限りのリスク項目の一覧表を作成して、詳細に検討し評価して組織とプロジェクトチーム内で共通認識としておく必要がある。
リスクには期間延長や費用増大を伴うものばかりではなく、期間短縮や費用縮減を可能にする事象がある。たとえば、その事象が発生すれば期間が短縮されたり、費用が節約できたりするような場合はプラスのリスク(Opportunity)といえる。プラスのリスクも計画時にリスクと想定される事象が発生した時の対処方法を検討しておくことが必要となる。
リスクもオパチュニティも期間と費用に影響を及ぼす可能性があるので、その最大値を検討して最悪の場合と最善の場合を数値化して評価する。
次表(図‐XX)にプロジェクトにより不要な検討項目も含まれているが、一般的なプロジェクトに必要なリスク検討項目を示す。

リスクの種類,  項目,  事象
社会的リスク 

政治          体制、紛争、内乱、法律、規制、規則、治安、出入国
経済          金融、為替、資金移動、市場、税金、物価、輸出入、保険
社会          言語、歴史、伝統、風習、商習慣、組合
第三者      隣人、近隣との関係
その他      原子力発電所、感染症

組織にかかわるリスク

財源              収入、支払
場所              作業場所
条件              作業変更、不可抗力、紛争解決
許認可           組織内、関係諸官庁、透明性、承認期間
仕事の基礎   基準、規格
責任の所在   上部組織、組織内のラインとスタッフ

業務に伴うリスク

道具             支給材、購入財
スタッフ      チームメンバー
外注             専門業者
行程             作業期間、労働時間
方法             適正性
安全衛生     安全規則、健康診断、診療所
品質保証     品質管理、文書・図面管理、事務処理
環境保護     空気、水、音、振動、廃棄物

自然環境に伴うリスク

地理と歴史     気象、海象、地勢、地質
自然災害         地震、雷、火事、津波、台風、水害、大雪

図 - XX 


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