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組織運営の技術

組織運営の技術-組織の背景

 組織運営の技術に基づいて運営のワザを磨き、運営のウデを上げるためには、組織運営の技術の基本をマスターしなければなりません。しかし、組織運営の技術をマスターしたとしても、それは本に書いてある建前で実際の運営とは違う、という現実があります。モノつくりの技術(ハードの技術)と比較して、組織運営の技術(ソフトの技術)が普及しないのは組織に課題があるといわれています。
 人が集まり組織が形成されると、組織間に上下関係が出来きます。強いものが上に立ち弱いものは上に従うという構図です。組織間の上下関係は洋の東西を問わず存在します。違いのもとは相手を違うものと認識して、違うけれども対等の付き合いをしようという精神の有無です。先進国は生活の知恵として、あるいは外交辞令として違う相手と対等の交渉をするために、少なくとも対等のふりをするために、莫大な努力を払い続けてきました。なぜ対等であることにこだわり続けてきたかというと、古代ローマ帝国にこだわりのもとがあったようです。
 古代ローマ帝国皇帝は当初ローマ人が勤めることになっていました。しかし、ローマ帝国の領土が地中海沿岸全体に広がるにつれて、地中海世界を支配し維持し続けるためには、ローマ人以外にもローマの市民権を与えることが必要だと考え始めます。ですから、ローマの市民権を持ってはいるがローマ人以外の人、たとえばスペイン人がローマ皇帝につくことも規則に基づいて許容しました。ローマ帝国は領土を支配し維持するために、上下関係はあるが違いがあってもできる限り対等であろうとしたのではないでしょうか。残念ながら対等の精神は力関係による滅亡を止めることはできませんでしたが。
 翻って日本は弥生人が縄文人を駆逐して、古墳人時代に大和朝廷を成立させます。大化の改新を経て律令制度に基づく中央集権政府が誕生しますが、すべて力関係で進んできたような気がします。一度も対等の精神で付き合って交渉するということはなかったようです。外交辞令はあったでしょうが、力による上下関係だけがあったのではないでしょうか。魏志倭人伝の“日出るところの天子、日没するところの天子に親書を送る、「つつがなきや」(どうだ、元気か?)”によく表れているのではないでしょうか。
 今日に至るまで、この上下関係で組織を見る構図は変わっていません。組織運営の技術は組織を対等の関係とみなして出来上がっています。したがって、組織は上下関係と認めざるを得ない環境のもとでは、組織運営の技術を定着させるのは至難の業と言わざるを得ません。乗り越えがたい組織の課題があるように思われます。しかし、組織がよって立つところの背景を見つめることで、改善の道筋が見えてくるのではないでしょうか。
なぜ外国人が皇帝職に就任しても、あの広大なローマ帝国を運営できたのでしょうか。一つの回答は元老院が皇帝職の詳細な義務と権限を定めていたことがあります。今でいうところの契約書と仕様書があったからです。詳しくはまたの機会に説明したいと思います。

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