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訪れた国

Episode 6 - Ukraine 2

 

 こんなに早くUkraine 2を書くとは思いませんでした。2月14日にEpisode 1 – Ukraine 1を投稿し、2月24日にはTwitterでWe are always with you.と気持ちを伝えたところ「たくさんの日本の友達が応援してくれています。ぜひウクライナを支援してください。」という返事でした。その後同じ日にロシア軍の侵攻が始まりました。

 キエフには郊外と中心部を結ぶ3本の地下鉄があります。旧ソ連時代に造られたのでモスクワやベラルーシの地下鉄と似ています。プラットフォームの天井が大きなアーチになっている駅は、大阪の御堂筋線を思いだします。四角い箱のような駅は太い柱で支えられています。キエフの地下鉄は全般に頑丈なつくりなのです。

冷戦時代の考えを反映しているのでしょうか、中心部の駅は地下50~60mの非常に深いところに造られています。歩道の入り口を降りると地下に改札口があります。改札を入ってエスカレーターで地下20mくらいまで降りると踊り場になっていて、頑丈なシャッターで駅を封鎖できるようになっています。次の50mくらいある長いエスカレーターからプラットフォーム部が隔離されてシェルターになるのです。

こうした地下鉄の構造は、シンガポール地下鉄で中心部の駅が厚いコンクリート壁に覆われた防爆構造になっていて、封鎖すると地上と隔離されたシェルターになるのと同じです。スイスのシェルター構造専門コンサルタントの設計でヨーロッパには普通に地下鉄を避難場所として使用する考えがあるようです。

シェルター構造の駅では水や電気などのライフライン設備が特殊構造で繋がっており、水や食料が備蓄できるようになっています。今、キエフでは無差別攻撃を受けて多くの住民が駅シェルターに避難しています。冷戦時代に造って使うことのなかったシェルターを21世紀になって使うことになると誰が想像したでしょうか。

キエフの地下鉄で感心するのは、大深度の構造物にもかかわらず地下水が全くしみ出ていないことです。地下構造物が漏水を止めることはほとんど不可能なので、東京地下鉄の駅や階段で見られるように、地下水は構造物の中へしみ出てきます。大深度での地下水圧は非常に大きいのですが、キエフ地下鉄には地下水が漏れたりしみ出たりする跡が全くないのです。内装で隠されているのかもしれません。

キエフは緑豊かな街(大きな木がたくさん生えている)で、大きなドニエプル川が街の中央を流れていますから地下水は豊富にあると思います。キエフに地下水がないとは考えにくいので、非常に優れた防水工事が施されているのでしょうか。

地下鉄はドニエプル川を渡るところで地上に出て鉄橋を渡ります。市の中心部は大深度に建設されていますから、ドニエプル川の横断も大深度のまま機械式のトンネル工法(TBM、Tunnel Boring Machine)などで建設できたように思います。鉄橋は攻撃されても構わないという考えだったのでしょうか。建設費用の関係か建設時に適切なTBMが手配できなかったのかもしれません。

東京の外環工事では大深度(-40m)にもかかわらず地表の陥没事故がありました。主な原因は、周辺の土砂を計算より多く掘削機械(TBM)の中へ取り込んで掘りすぎたことにあります。ドニエプル川の底を陥没させたら大変な大事故につながりますから、トンネル工法で川を横断するのを避けたのかもしれません。

キエフの街では迷彩服を着た若い男女のウクライナ兵を何度も見ました。市内のキャンプから自由時間に出てきたのか、それとも通勤途上だったのかもしれません。迷彩服を着ていたので兵隊さんだとわかるのです。もし、彼らが迷彩服を着ていなければ、どこの大都市でも普通に見かける余暇を楽しむ若者たちです。

あの明るい若者たちが今、祖国防衛のために時代錯誤も甚だしい不当な侵略者に向かって勇敢に戦っていると思うと応援せずにはいられません。帰国する時、仕事の仲間からいただいた悪を追い払う木のお守り(写真参照)を神棚にあげて、彼らが侵略者を打ち払うように祈っています。ロシアは世界中から経済的制裁を受けて、もうすぐ破綻することは違いありませんから。

ウクライナがんばれ!

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