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組織運営の技術

組織運営の技術-業務執行の品質
 
 町役場が送金を数百件に分けて送るところを、送金総額を一件にまとめて送ってしまうという間違いがありました。
間違いはなぜ防げなかったのでしょう。送金手続き伝票の確認は業務執行手順に基づいて行われたのでしょうか。送金承認は執行手順通りの手続きを経て承認されたのでしょうか。銀行が町役場からの送金依頼を受けた時、銀行内のどのような手続きを経て送金が執行されたのでしょうか。手続き担当者、確認者、承認者は大きな金額を一口座に送金することに不信を抱かなかったのでしょうか。
また、全市民の情報が入ったUSBを一時紛失するということもありました。最も重要な個人情報の入ったUSBを業者の担当者に渡す前に、市役所内ではどのような承認手続きがあったのでしょうか。業者の担当者はどのような記録を市役所に残してこのUSBを得たのでしょうか。関係者は重要なUSBを取り扱うにあたり業務執行手順書に基づく手続きを行い、記録を残していたのでしょうか。
人が作業をする限り業務執行上の間違いは避けることはできません。したがって、どのような組織にも業務手順書があり、すべての作業は手順書通りに行って記録を残すことが求められています。業務の執行は作業ごとに完了確認を複数で行い記録に残すという基本的な要求と、作業承認は必ず複数の目を経るという基本規則は、どの組織も当たり前の手続きとして業務執行手順書は作られています。業務の記録を検証すれば、作業や承認が業務手順書の執行手順と手続きに基づいて行われたか、否かが確認できるようになっているのです。
  業務執行上の間違いや手直しを最小限にして、業務執行の品質を確保するため、
1        具体的な業務手順を定めた業務手順書を作成します。
業務手順書作成は、行っている業務の始めから終わりまでの流れを復習し検証して、無理や無駄な作業を省く見直しが必要で最も重要な準備作業です。
2        業務手順書に従って、作業完了ごとに複数による確認書を作成します。
作業承認も同様に複数による承認書を作成します。
3        複数人のチェックが入った確認書や承認書は記録としてファイルに保存します。
明治維新による近代化には製造技術の発展もさることながら、運営技術の発展も必要でした。しかし、欧米視察やお雇い外国人から習ったのはモノつくりに必要な最新機械の導入というハードの技術で、新しい組織を作り運営する方法やその手法というソフトの技術は封建時代からのやり方を踏襲したのです。
幸いにして日本は欧米の植民地にはならなかったので、先進諸国から組織を運営する最新の手法を学ぶ機会はありませんでした。数百年かけて作り上げた武士による組織運営の伝統がありましたから、同じ手法を維新政府は適用したのです。新しくできた会社も同様の方法で組織の運営を行いました。
 ハードの技術を重視し、ソフトの技術は封建時代にままという状況は現在も続いています。その結果、生産の生産性は先進諸国と遜色ありませんが、労働の生産性は先進諸国の6割しかなく先進国の中で最下位です。男女格差報告では146か国中116位です(1位はアイスランド、最下位はアフガニスタン)。組織の運営手法(ソフトの技術)を見直さなければ、今後も歩みは遅々として進まず今の3周遅れは取り戻せません。
 業務執行の品質を確保しながら、労働の生産性を上げるためには組織の運営というソフトの技術を見直すことが不可欠です。今、組織の運営手法の見直しに取り組めば遅すぎることはありません。改善の第一歩は業務記録を取って記録文書を残すことです。

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