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クソゲーではなかった作品の話をしたい①オプーナ オタク遺言シリーズ


選手入場!!



「あいつ(マリオギャラクシー)とタイマン(発売日同時)?おもしれーじゃん」火を噴いたビッグマウス!頭上に輝く丸い球!!平和な見た目で濃厚なSFだ!!惑星の!!銀河の守護者がリングイン!!


オプーナ!!





当時、えらく騒がれたオプーナ。発売前からネタにされ、発売してからは3D酔いするとか、最初の施設のマップ分かりにくすぎでクソとか、キャラデザイン適当すぎだろとか…「叩いて良いおもちゃ」のように扱われた。


〜オプーナとの出会い〜

私がオプーナをプレイしたのは大学生の頃で値段も落ち着いていた。『ゲームをクリアしないと家に帰れない場所』に軟禁され、日々ノルマをこなしていた。ゲームが楽しいとか楽しくないとか、そんな感情は持たずに色々な作品をクリアしていた。今思えば気が狂っていた。



オプーナもクソゲーだと聞いていたし、それまでに信じられないようなクソゲーを乗り切ってきた自分なら問題なくクリアできるだろうと思っていた。



結論から言うとオプーナは名作だった。確かに直したほうが良い部分はあるし、万人ウケする作品じゃないのはわかる。しかし、他のRPGだと途中で飽きてダレてしまい、さっさとクリアしたいシナリオもどうでもいいと思っていた私が、オプーナの世界観をすっかり楽しんでいた。


FF7はエアリス?エリアス?が出てくるあたりでもうめんどくさくなっていたし、ドラクエ4では勇者編が始まってもうラスボスで良くない??と飽きていた人間が、クリア後まで楽しめた数少ないRPGだ。



オプーナは今では「内容は評価されているが、不当にネガティブなイメージが先行した」と評されている傾向にある。売れなかった理由は色々あるだろうが、私は面白い作品だと評価したし、自分の言葉で感想を残しておきたい。戦争を語る老人のように、次の世代に向けてオプーナの姿を語りたい。


〜オプーナの背骨は「濃厚なSF」〜


例えばオプーナを人間型の異星人って設定にして、ハリウッドで実写映画化して、父親役をシュワちゃんとかにして、タイトルを「コスモガード」とかに変えたら、それなりの人気シリーズになると思う。


それくらい、シナリオの骨組みがしっかりしている。あんなゆるい顔のキャラクターなのに。しかもSF、ディストピア系だ。オプーナの魅力を語る上で最も重要なファクターだ。ネタバレをなるべく避けながら、以下シナリオの要約


・銀河を守る仕事をするオプーナ父。めちゃくちゃ強い。元々戦闘能力の高い種族で、オプーナもそういう仕事をする予定だった。家族で宇宙船で移動していた。



・宇宙船にアクシデントがありランドロール星に不時着。その星で生活しながら家族との再会を目指す事に。


・ランドロール星は特徴的な管理社会。生まれた時に遺伝子検査で職業適性が見極められ、施設に入り訓練する。基本は卒業まで家族と会えない。本職は指定されるが副職は自由。労働は義務であり生涯でノルマがある。


・ノルマをこなすと住民ランクが上がる。ランクを上げないと他の地域へ移動もできない。ランクを上げるほど身分と自由度が上がる。オプーナは家族を探すため、このシステムに乗っかる事になる。


・全てのノルマをこなすと労働しなくて良いと認められ、楽園と呼ばれる上流国民エリアで悠々自適に暮らして良い。


・よくあるAIが管理する閉塞的な社会をイメージしてしまうが、実際には衣食住が確保されているし、正確な適性検査の元労働を与えられている。国の言う事を聞いていれば(なんなら、仕事を多少サボっていても)安定した人生を送れるし、住民の満足度も高い。楽園に行くことを目指して労働するのが基本的な暮らし。


・オプーナは戦闘能力を活かしてランドロールガードをすべきと判定される。モンスターから人や街を守る仕事だ。住民同様、職業訓練施設に入る所から本編が始まる。



もうこの時点で私は驚いていた。めちゃくちゃ面白い話になりそうだが?


Wiiにありがちな、リモコン振ってりゃ終わるゆるいクソゲーだと思ってスタートしてるわけだから。これもしかして濃い話始まりませんか?と身構える。


住民の話を聞きながらゲームを進めていくと、世界観が分かってくる。幼稚園〜小学生くらいの子供達が施設にいて、あぁ子供の頃から訓練と教育を受けていて管理上理にかなっているなとか。みんな管理社会を嫌がっているかと思ったら、上流国民目指してそれなりに仕事頑張るぞみたいな人が多いんだなとか。


就職活動とか「自己実現か、生活か」…みたいな心配がないわけだから、人生のストレスもだいぶ少ないのかもしれない。理にかなった世界なのでは?と受け入れ始めた頃、子供達のクラスに混ざる老人を見つける。不審者か?



老人「戦闘に適性があると判断されたが戦いたくない。拒否し続けてたらこの歳になっちゃった」 (要約



う、うわぁー〜…


50歳でアルバイトしなきゃいけなくなって、コンビニに勤めたら周りが全員10代で辛い…とか、そういう次元じゃないよこれ。物心ついた頃には訓練施設に入れられて、その中で老人になってるんでしょこの人。人生がそこで完結しかけてるんだよ。家族ともまともに会えてない…というか亡くなってる可能性の方が高い…こわわ><


想像して欲しいんですけど、貴方が子供を産んで、職業訓練が終わったら一緒に暮らせますよと言われ、子供がいつまでも卒業できないわけですよ。理由は本人の意思で「戦いたくない」責められないでしょ。


葛藤の末、本人の自由意思に任せたらずっと会えなくて、貴方はもうこの世に居なくて、子供はまだ職業訓練を終えられず老人になっている。これだけで一本小説書けそうなテーマをあっさりぶち込んでくる。Wiiだぞこれ?(失礼


もしハリウッド映画なら「序盤で幸せな理想郷を見せた後に、隠部が見え始めて主人公が疑問を持って物語が動き出す」みたいなやつだよ。最序盤にぶつけてくるかね?むしろこれはオチに使うと思ってた。管理社会も良い部分あるけど自由を勝ち取ろうぜ!サンキューオプーナ!みたいな。


序盤にこのテーマをぶつけてくると言うことは、もっと深い話するつもりだぞこいつら。


そこからも、管理社会のメリットとデメリットが様々な形で描かれる。テレビで科学技術や楽園の素晴らしさ(要はこの管理社会の素晴らしさ)を伝え労働意欲を増す工夫がされていたりと細かい部分まで作り込まれている。


この世界は犯罪とは無縁なのかな?と思ったら、犯罪者は町の外に追い出されて戻って来れないとか。(町の外は戦闘民族でさえ負けるくらいのモンスターが闊歩しているから、勝手に処分されるし街内に刑務所も処罰制度も要らないんだね〜とか)だから怖ぇって!一本小説書けそうなテーマをあっさりぶつけてくるなって。


現実社会の不便だと思っていた部分が、実は確保された自由なんじゃないかとか、国の責任とされている部分に我々はだいぶ助けられているんじゃないかとか…。別世界の話だが、現実社会への風刺や皮肉も効いている。子供の教材になるよオプーナは。子供が楽しめなさそうなゲームデザインだけど…



しかも楽園とされていた場所は実はV...で...が...
実は……で……ウクレレ...  等々。まだまだ話が面白くなっていく。



〜ライフスタイルRPGの真髄〜


オプーナのジャンルに「ライフスタイルRPG」とある。なんのこっちゃと思っていたが、中盤にはすっかりオプーナ世界の人生を楽しんでいた。


上記にあるように、仕事をこなして住民ランクをあげるのがゲームの基本になる。副業は自由なので、各地で住民の話を聞きながら様々な職業体験をする事になる。


ドラクエでいう小さなメダル要素があり、マップのわかりにくい所を調べてアイテムを得る要素と、各地に美術品があって鑑賞できるようになっている。この美術品がなかなか味わい深い。精密な模写を追求し続けた画家の最期の作品が「自然の中に置かれた額縁」だったり、建物内部に謎の柱があると思ったら上階まで貫通した彫刻だったり。元ネタはあるんだろうけど、ゲーム独自の表現もあって面白かった。


なにより「風景に意味がある」という要素が面白かった。思い返してみれば、今までのRPGで、じっくり風景を見ることは無かった。Aボタン連打しながらグルグル歩いて、アイテムがあるかを機械的に確認していただけだった。ゲーム内の美術品を、美術品として楽しめたのは初めての経験だ。


カメラワークが悪いと言われているが、死角にアイテムがありがちなので、そこにあるな!と予想して楽しんでいた。


キャラクターのセリフもちょっと皮肉が効いてテンポが良い。オプーナ弟がカメラ操作について説明してくれるが「あ、今もしかしてカメラ動かそうとしてる?」とプレイヤーを見透かして煽ってきたりする。うっせぇぞキンタマ野郎。



ただゲームクリアを目指すと煩わしく感じてしまうのが難点だが、こういった寄り道要素がたくさんあり、この星の生活を満喫することがゲームクリアにも結びついてくるという仕様だ。釣りしたり、ウクレレ弾いたり。ダンス教室のテレビをダラッと見ていたら、忘れた頃に振り付けを覚えているか試される要素があったり。作業ゲーじゃんと言われてしまうと否定できないが、やってる当人は作業感なく、純粋にオプーナワールドを味わっていた。



私はスムーズに最終戦に行けたが、クリアを急いでいると引き返して資格を取るイベントをこなさなきゃいけなくて不満らしい。この辺が万人ウケしない要素だろう。ランドロールライフを楽しめば良いのよ。攻略情報見ないでプレイしてかなり正解行動をしていたようなので、私はオプーナに祝福された人類だったのかもしれない。



他のキャラと親愛度を高める要素もあり、登場人物達のデティールが少しずつ見えるようになっている。この要素が終盤の熱さに繋がってくる。


少しネタバレするが、最終戦に向けて同行メンバーを厳選することになる。この最終戦は向かうとほぼ死ぬ戦いだと念を押される。仲良くなったキャラ、好きなキャラと最終戦に挑みたいが死ぬのか…とプレイヤーを躊躇わせる。


最終戦の呼びかけた時の反応は様々で「おまえの頼みなら断るわけないだろ」とか「俺は嘘つきだ。死ぬのは…怖くないぜ」とか「私のことなんか忘れなさいよ(ツンデレ)」とか。キャラクター数が結構いるのに、細かくセリフが用意されていて偉い。世界を救いたいから…とかではなく、オプーナと一緒なら、オプーナの頼みなら…というスタンスで感慨深い。


クリア後に各地をまわると細かくセリフが変わっていたりして、その辺はRPGとして完璧だろう。オプーナとして生活した成果がしっかり残る。熱いなぁ。ライフスタイルRPGって謳い文句は嘘じゃない。この星で生活する事が話のメインなんやなと。



〜戦闘はRPGの華〜

RPGといえば戦闘。オプーナはストーリーや世界観が優秀で、戦闘はつまらないゲーム…ではない。むしろ、戦闘の面白さはドラクエやFFを超えてると思う。



元来私は、ゲームのストーリーやテキストを重視しない人間だ。無難な話だな〜と思ったら流し読みするし、このノリが続くのキツいなと思えば容赦なくスキップする。ゲーム部分、戦闘が肝やろ。良い文章を求めるなら本を読む。



オプーナの戦闘の良さを一言で言うと、テンポが良い。以下、特徴の羅列


・戦闘時間が2分 ボス戦でも長期戦にならない!それでいて時間ギリギリの緊張感も味わえる!


・相手の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押して妨害したり、攻撃を溜める程次弾が遅くなるなどのリアルタイム要素


・通常攻撃がボンボン(頭の球)で、軌道をコントロールして特定の部位に当てるコントロール要素



他作品の悪口を言うわけじゃないけど、ボタン連打で戦闘が終わったり、ボス戦は回復をタイミングよく使うだけの長期戦になったりすると作業感が強くなる。苦戦しないと眠くなるし苦戦すると長期戦の挙句レベルあげして戻ってくるわけだからさらに作業感が…。


ボス戦だろうと時間制限があるのはすごく良かった。どんな敵でも2分以内に勝てるし、負ける時も2分以内で済む。


ダラダラと戦わずに緊張感が味わえる仕組みだと思うので、もっと磨いて次回作に繋いで欲しかった。




〜まとめ〜


色々思い出して、際限なく書いてしまいそうだったので圧縮した。


オプーナには悪い部分もたくさんあったが、私は完璧なゲームを望んでいるわけじゃないんだなと気付かされた。減点方式ではなく、ここは良い!という加点ポイントを評価しているんだなと。オプーナは、その加点ポイントに特有の魅力があった。


ゲームレビューを見るとどうしても減点ポイントに目が行きがちで、他のゲームで当たり前に出来る要素に不備があると世間の風当たりが厳しくなる印象がある。


クソゲーと呼ばれている物を多数やってきた私から言えることは「総合するとクソゲーでも、どこかにキラリと光る要素があれば楽しいよね」と。



オプーナは良ゲーだよと擁護されている方だが、世の中にはそう言ったキラリと光るクソがたくさんあって、クソクソ言われて下水に流されてしまっている。自分の手で触って、食べて、たしかにクソだったけど旨みはあったと語れる大人でありたいなと思う。みんなもやろう、オプーナ。







第一部 完



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