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『仮面ライダー』ショッカーの世界征服作戦は「あと一歩」まで行っていた!

電子用『ショッカーの大作戦』タイトル画

 世界征服を企てる悪の秘密結社といえば、思い出すのは『仮面ライダー』のショッカーだ。組織は、人間に動植物の能力を移植した「改造人間」を中心に構成され、世界各地に支部があるという。
 財宝を奪ったり、要人を殺害したり、ダムを爆破したり、発明を横取りしたり、バスを乗っ取ったり……と、実にさまざまな悪事を働いているが、その作戦は必ず失敗に終わる。なぜだろう?  仮面ライダーが彼らの野望を阻止するから当然という気もするが、それだけが理由だろうか。
 ここでは、『仮面ライダー』の初期に展開された作戦を二つ見てみよう。第2話で描かれた「新型ビールス作戦」と、第13話の「原子力研究所襲撃作戦」だ。これらのエピソードを見ると、実はショッカーたちの作戦が意外にもいい線まで行っていたことが見えてくる。

◆第2話でウイルス作戦!

 ウイルスの威力がすごいことは、いまや全人類が「新型コロナ」で実感しているだろう。咳や発熱、呼吸困難、味覚障害などのツライ症状に加え、感染すると体内で増殖し、さまざまな経路で別の人にも感染することが何より怖い。感染経路がわからなかったり、正しく対処しなかったりすると、広い地域で大流行する「パンデミック」が起こってしまう。これがホントにオソロシイ!
 秘密結社ショッカーは、早い段階でそれに気づいていたのだろう。なんと『仮面ライダー』の第2話で「新型ビールス作戦」を実行している。ビールスは当時の言い方で、もちろんウイルスのことだ。
 それは「恐怖蝙蝠男」という物語。あるマンションの住人たちが、口から牙が生え、他人を見れば噛みつこうとするようになる。駆けつけた本郷猛に向かって、蝙蝠男は言う。「ショッカー科学陣が新たに培養したビールスが、どれほど人間に効果があるか、そのデータを調査しているのだ」。えっ、正直に言ちゃっていいの?
 しかし大変な話である。おそらくショッカーのウイルスは「噛みつき感染」するのだと思われる。新型コロナやインフルエンザの場合は、マスク、うがい、手洗いを徹底すればほとんどの感染は防げるが、ウイルスに感染した人が積極的に噛みついていったら、それらもまったくの無力。どんどん広がってしまうだろう。
 そもそもこれはどんなウイルスなのか。本郷が城南大学の生化学研究室にこのウイルスを持ち込むと、友人の岸森は顕微鏡を覗いて「信じられん!」と驚く。「本郷、君が持ってきた血液のなかに、頭脳を持ったビールスが入っているんだ」。そ、それは筆者も信じられん!
 ウイルスというのは、DNAかRNA(いずれも遺伝情報を記録する)のどちらかがタンパク質の殻に包まれただけの単純な構造で、呼吸も光合成も行わない。生きるための仕組みを持っていないわけで、学者によっては「ウイルスは生物ではない」と主張する人もいるくらいだ。だからこそ、他の生物の細胞に侵入して、その仕組みを利用して増殖するのである。
 そんなウイルスに頭脳がある!? 筆者がモーレツに驚いていると、劇中の本郷と岸森は「この頭脳を持ったビールスが脳細胞に回ったとすれば、一定の音波でそのとおりに動く」「その血液を持った人間は、音波によって支配されるかもしれない」と、どんどん推理を進めていく。んーと、ウイルスが音波に反応するとか、筆者には意味がよくわかりません。だけど、本郷は知能指数600の超天才だからなあ……。

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