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古い原稿用紙

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引越し中。複数のブログに分散していたエッセイをこちらにまとめようと思います。 写真・石川竜一
運営しているクリエイター

#エッセイ

猫は、毎日殺される

ビールと酢豚と杏仁豆腐で膨らんだ腹をさすりながら、中華料理店のテレビに映るワイドショーを…

シマニテ
4年前
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イレイザーヘッド

ぼくが小学校の2年か3年の時のお話です。 生家ではよほどの事情がないかぎり「家族全員で食卓…

シマニテ
4年前
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螺旋階段の上と下で

「その犬と豚のどこがどう違うんだ?」 高校1年の秋だったと思う。その日は、朝から冷たい雨…

シマニテ
4年前
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キリンの子

昨日、いや、正確には一昨日の夜。たまたまテレビのスイッチを入れると、歌人の鳥居さんが出演…

シマニテ
4年前
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ぼくは「君が代」が歌えない

「君が代」が好きだ。 勇壮さや華やかさに欠けるけれど、流麗でどこか寂寥感漂う旋律は、いか…

シマニテ
4年前
9

Cの物語

大人の話を息を潜めフスマ越しに聴くのが好きだった。話がミステリアスであればあるほど胸を躍…

シマニテ
4年前
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Mさんのこと

元上司のMさんは、週に一度くらいの割合で「雪崩れ」を起こした。 机の上にうず高く積み上げられた資料が崩壊するのだ。打ち合わせに遅刻することは日常茶飯事だったし、名刺の代わりに商店街のスタンプカードを出しているのを何度か目撃した。お金がないのにタクシーを拾い、支払いの段になると「ごめん。ごめん」と頭をかいた。 声は小さいし笑いながら話すので、なにを言ってるのかわからないことがよくあった。デスクには、資料のほかにもお菓子の食べ残しやペットボトル、クリーニングのビニール袋につつ