それもゆとり

名古屋に住んでいるときだった。
当時がミニマリスト全盛期であることは、書店で働いていたので知っていた。
店頭に並びまくるその系統の書物を手に、
「ミニマリストなのに本買っちゃうとか矛盾してない?ww」
みたいな立ち読み客のセリフが、全くときめかなかったっけ。

ボクは無いもの暮らしをしていた。六畳と銘打たれた部屋はいびつな五角形で、それに満たないのは一目瞭然。あるのは布団、冷蔵庫、電子レンジ。押入だけは整備されていたのでそこに衣服を突っ込む。あとは段ボール1個。たしかこの中にも季節違いの衣服を入れて小さな机にしていた。

この段ボールは思い入れがあった。そのときの前職の会社寮に入寮する際、許されたのは手荷物一つと前もって輸送された段ボール1個。赤い縁で縦長に型どられたシールにはわざわざ【入寮日】と印字されており、そこに8/16とマジックで記した。それが2014年の夏のこと。

2015年の夏から2017年の夏までボクはその段ボールの上でエサを食らい、surface pro3の後付けキーボードに文字を打ち込み続けた。

物で言うと名古屋での二年間傘を持たなかった。
朝から雨なら徒歩3分の伝馬町駅まで突っ走るか、外出しない。帰りは濡れてやる。
今にしても傘を持たなかった理由はわからない。今から本屋で接客しようとする奴が、あからさまに雨粒引っ提げ出勤しようと四の五の言われないほどぬるい本屋だったから、続けられたのだなそういえば。

今は結構、またそういう遊び生活を欲しているから書き留めておこうと。

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