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仔猫の様子が変

仔猫が全然ご飯を食べなくなった。いつもは遠くから見守っていた母猫和子がやってきて「ご飯ですよ。食べなさい」としきりに鳴いて促す。でも、全然食べない。

翌朝から姿を見せなくなった。母猫がしきりに辺りを見回し、せつなそうに鳴いている。「出ておいで、出ておいで」と呼んでいる。でも、仔猫はどこに潜り込んだのか姿を見せない。

哀しそうな和子の声、聞いているだけでせつない。

「動物病院に連れて行こう」と娘。「うちの猫でもないのに」とわたし。「放っていたら脱水で死んでしまうよ。わたしが何とか捕まえて連れてゆく」「捕まるかな」

まる二日、仔猫は姿を現さず、和子だけがウッドデッキに来てか鳴いていた。何かの病気に罹ったのだろうか。寄生虫でも湧いたのだろうか。どこかでひっそり死んでいるとか……。

まさか、それだけはあってほしくない……

四日目、朝、仔猫が姿を現した!和子が傍に付き添っている。和子が私の顔を見て鳴いた。「この子にご飯やってちょうだい」と。

急いでキャットフードを出した。仔猫は皿に近づいた。首を突っ込んだ。

食べている!ああ、よかった……。

いつもより、ずっと少なかったが、とにかく少しは食べた。昼過ぎ、また和子に付き添われてやってきた。

少し、食べた。すっかり痩せて、顔がキツネみたいになったが、とにかく生きていた。よかった……。

少し食べると疲れたのかウッドデッキで休んでいる。どこかに潜り込んで死んでしまうのが一番怖かったから、とにかく、よかった。

和子は、仔猫を舐めていたが、トイレに行った。トイレと分かったのは、直ぐ、急いで帰ってきたからだ。

仔猫が大きなアクビをした。アクビをするのは体調が良い証拠。もっと沢山食べてくれればいいが、とにかく、少しでも食べられればいい。

こんな心配事があるから、もう、猫は飼わないと固く決心したのに、こんな重荷を背負ってしまった。

わたしの抗癌剤治療が終わったら、秋になって涼しくなったら、まず和子を、それから仔猫を捕獲して避妊手術を受けさせよう。

結局、わたしが飼うってこと?

自分の手術代諸費用もけっこう使ったのに。猫二匹、健康保険はないから、やっぱりけっこう使うことになる。

でも、とにかく、生きて姿を現してくれた仔猫がいじらしい。守ってやりたい。和子もとにかく安心したらしい。傍で横になっている。

この母性愛……涙出そう……。

仔猫がウッドデッキにいることは、多少、体の具合がいいのだろう。本当に悪ければ、姿を出さないはずだ。

とにかく、明日はもっと沢山食べてね。

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