しゃぶ葉・マスクパーティー
「ミチコおばちゃん。コロナの終息を待っているといつになるか分からないから、今日、快気祝いしよう。車で迎えに行くから」
姪から電話があった。コロナ騒ぎで友人知人との食事会はすべてキャンセル。巣籠り状態の日々の嬉しい誘い!
大きな車で迎えに来てくれた。夫と長女もいっしょに連れて行ってくれるって!なんて気前がいいの~
7人乗りの車で近くの「しゃぶ葉」へ。
1月に入院騒動を起こしてから私自身にも世界にも激震が走った。
私は癌患者になってしまった。そして世界はコロナに浸食されている。
レストランの光景も一変した。入り口で手を消毒して、食べる直前までマスク姿。
「ミチコおばちゃん、元気になって良かったね」と明るい姪の声で始まる。
姪は私にとって娘と同じ。ある意味娘以上かも。外国にいる長女、遠くに住んでいる子育て中の次女が病院に駆けつけられない中、姪夫婦がお見舞いにきてくれた。
ガウン、パジャマ、ぬいぐるみ、化粧水、テレビカードまで買って私がテレビを見られるようにしてくれた。
どれほど孤独と不安から救われたか。
そんな姪が一家揃って快気祝いを!私、幸せ者だよなあ~
お肉をたらふく!デザートたらふく!長女がせっせと食事の世話をしてくれる。姪がドリンクをもってきてくれる。
「ミチコおばさん、手術後でぐったりしてるのかと思ったら元気でびっくりした」「抗癌剤治療もだいじょうぶだよ」「頭の毛が抜けたら、可愛いかつら買ってあげる」「帽子も買ってあげる」「半年の治療なんてあっというまだよ」
若い人たちの元気な顔と声に囲まれ、体の奥から元気がわき出てきた。同年齢の人との語らいもしみじみと良いものだが、話題は命の終焉を見つめる方向に向かってしまう。
若者との語らいは、生命力を分けてもらえる。
最後に記念写真。
一枚はマスクなし。「マスクつけると面白いんじゃない?後で見た時、ああ、コロナ騒ぎのときだ、と分かるから」
姪の提案で最後に全員マスクで写真。
令和2年の春。
後できっと、ああ、あのころ手術したんだな。あのころコロナ騒ぎだったんだな、と思い出すだろう。
人は集まり、一緒に食事し、どうでもいい話に花を咲かせないと、生きている楽しみがない。家に閉じこもっていると気が滅入る。
コロナなんかに負けないぞ。とみんなで集合写真取ったこの日。令和2年3月20日。
抗癌剤治療に取り組む覚悟ができた。
よしんば頭髪が抜けたってかまわない。治療が終われば毛はまた生えてくる。それに、抜けない人が9割だというから。
持つべきものは良い親戚、友人たち。こんな良い人たちに囲まれているのだから、治療頑張らなきゃ。
最高の一日をありがとう!
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