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良いとか悪いとかなんて、くだらないことさ「人間是非一夢中」

人間是非一夢中

うちはテレビのチャンネル権を、6歳の息子が握っています。もちろんテレビばかり見ていたら、もうおしまいだよ、などと消させますが、僕も妻も、これだけは見たいという番組もないし、あれば録画して息子が寝てからそれぞれ見るといったスタンスです。

そんな息子が、テレビをつけっぱなしにして寝てしまいました。ついさっきまでは熱心に見ているようだったのに……。部屋に残された僕は、息子がつけっぱなしにした番組を、ぼぉっと眺めていました。

それはNYで活動している、美術家…絵描きの松山智一さんという方のドキュメンタリーでした。素敵な絵を描くなぁと言う一方で、その人の目つきや語り口がどうにも好きになれず…というか聞いていると息苦しくなっていくんですよね。

彼のアトリエには10人のスタッフがいて、その人たちの指導の仕方が……いや、もちろん成功した彼の言っていることは100%正しいのだけど、彼は非凡の才能の持ち主です。一方で語りかけているのは、まだ凡才の絵描きです。凡人が聞いても、彼の言葉は、真に理解はできないだろうなと。

例えば、本田宗一郎やスティーブ・ジョブズの、生前の言動を書籍化した本がありますよね。僕は本田宗一郎については少し読みましたが、スティーブ・ジョブズについては興味が湧きません。だって、彼は天才で、なにか ことを成すために生まれてきたんです。

一方の僕は凡才です。歴史に名を残そうなんて思ってもいません。そんな僕が、スティーブ・ジョブズの表面的なことだけをまねても、果たして意味があるだろうか……いや無いだろう……というか周りからウザがられるだけだろう……みたいなね。

それと同じで、美術家の松山智一さんも明らかに非凡なんですよね。まずは、とても生真面目に生きてこられている。7:30にはアトリエへ行き瞑想し、8:00からは読書をする、9:00からはスタッフとの朝礼、9:30からは掃除、10:00から仕事に取り掛かり、夕方に仕事が終わったらまた掃除して帰宅する。

「几帳面な人は、高いクオリティの作品が描ける、ということを僕のアトリエの作品が証明しています」

なんてことを言っていたかな。僕も20代で彼に弟子入りすれば、まだ几帳面に成り得たかもしれないし、その几帳面さで高い品質の作品を作る、手伝いができたかもしれません。でも、40半ばの今は、聞いているだけで苦しくなります。僕には絶対に無理だから。

彼は2020年の2-3月に、明治神宮に作品展示するために日本に帰国しました。その日本滞在中に、NYでも新コロが急激に猛威を振るい始め、彼は日本から出られなくなりました。日本にいるあいだ、経営者として、自身のスタッフの心配をします。彼なりの生真面目さで心配するため、これまた見ている僕には息苦しくなります。

彼は日本から、スタッフのモチベーションを高める意味もあったのか、スタッフに自宅での作品制作を指示します。新コロの今だからこそ描ける作品を模索するんです。

一方の僕は、(特に外出する用事もなくなったので)ただただ家に引きこもり、「なんか新コロとか言ってるけど、みんな大変だなぁ」って、ぼぉっと過ごしていました。

彼が新コロから何かを生み出そうとしていた同時期に、僕はただ新コロから逃げていました。そんな自分が浮き彫りになる番組でした。

「すげえ人だな」という感じですね……。

そこで、「おし! 僕も何かを残してやる!」と発奮することもないんです。

まぁだから僕はダメだなって思うわけじゃないです。人それぞれだから。僕は彼のようには生きられないし、彼も僕のように呑気には生きられない。どちらの生き方が素晴らしいかと言ったら……生まれ変わったとしても、彼は彼の生き方、僕は僕の生き方を、またしたいと思うだろうと思うんですよね。

彼は「あなたダメダメな人生ですね」って言うかもしれないし、彼から見ればそうだろうなと僕は思うし……だから「いやぁまぁ…そういうことになりますかねぇ(ポリポリ)」みたいな返事を僕はするだろうなと。続けて「それだけ生真面目で几帳面だと、毎日が辛くないですか? 作品が完成すると、そうした苦しみは報われるものでしょうか?」と、聞いてみたくもあります。

◆◆

昨日、博物館へ行った時に、一つの掛け軸に目が留まりました。

なんて書いてあるか、どんな意味なのかは、たまたまその番組を見ながら調べて知りました。

人間是非一夢中

良寛さんというお坊さんの漢詩の一節で、僕が見たのは彼の筆によるものだったようです。

僕の超訳だと……

人の考える良い悪いなんてのは、夜に見る夢のように、どうでもよいことだよ

……と言った意味でしょうかね。あまりにも自分に都合の良すぎる現代語訳かもしれませんけど、まぁそれほど外れてもいないのかなと。

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いろいろと難しく考えずに、たいていのことは「どうでもいいよ」って生きていきたいものです。

◆◆

みんなのギャラリーで「どうでもいいよ」と入力して検索したら、意外にも30-40の候補写真が出てきました。でも、いまひとつ「どうでもいい」感じの写真が見つからず……水引の写真が綺麗だったので、この季節はだいぶ異なりますが、この写真をお借りすることにしました。

水引って、とっても小さな花を咲かせるんです。この淡い赤いのが花なんでしょうね。小指の爪の先くらいの小さな花です。でも、茎(?)がヒョロッと長いんですよ。だから そよ風が吹いただけで揺られてしまって……トップ画像のようにピタッとぶれずに、鮮明な写真を撮るのが難しい……というか時間がかかります。

ここ方は、たまたまなのか、それとも風がやむのを、レンズを覗きながらジーッと待ったのか……それとももっと上手い方法があるのか……聞いてみたいものです。



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