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ただ一撃にかける その二


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ブロードウェーの華麗な行列   ウオルト・ホイットマン

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壮麗な顔だちのマンハッタンよ、
わが友アメリカよ、わたしたちのもとへ、それではようやく東洋のご到来だ。

わたしたちのもとへ、わたしの街よ、
聳え立つ大理石と鉄の美しい家々が向き合って立ち並び、そのあいだを人びとが行き交う街よ、
今日こそ我らが「対極」のご到来だ。

「創始の女神」のご到来だ、
さまざまな言語の雛を育てた巣、詩編の遺産を遺してくれた古代の種族、
鮮やかな血色をし、憂いに沈み、うっとりと瞑想にふけり、熱い思いに駆られながら、
むせ返るほどの香りに包まれ、裳裾の長い、ゆったりした衣服をまとい、
顔は日焼けし、熱い魂、きらめく瞳をそなえた、
梵天の一族のご到来だ。

見るがいい、わたしの歌よ、これらのことにとどまらず、もっと多くのことまでが、行列のなかからわたしたちに、閃光のように届けられる、
めまぐるしく変容しながら行列が進み、神の手にある万華鏡さながらに、変容しつつ進みゆくとき。

この日焼けした使節たち、島ぐにからきた日本人だけでなく、
しなやかで無口なヒンズー人も姿を見せ、アジア大陸そのものが姿を見せ、過去も、死者も、
謎めいた驚異と寓意を孕んで夜と朝とが交錨する朦朧たる闇も、
封じこめられた神秘、世に知られぬ古い時代のミツバチ、
北ぐにも、うだる暑さの南国も、東のかたのアッシリアも、ヘブライも、古代のなかの 古代人も、
広大な都市の廃墟も、いつとはなしに過ぎていくこの現在も、これらのものが一つ残らず、そのほかもっと多くのものまでが、この花やかな行列のなかにある。

地球の形状、つまり世界が、このなかにある、
「大海原」、強い絆で結ばれた島々、ポリネシア、さらにそのかなたの岸辺、
君がこれから──君、「自由」よ、君の西部の黄金の渚から向き合うことになる岸辺だ、
そこにはそれぞれの民を擁して営まれる国ぐにがあり、ここには不思議なことに幾百万の大衆がいる、
群集でごったがえす市場、側壁あるいは奥の壁に偶像が並ぶ寺院、仏僧、バラモン僧、ラマ僧、
官吏、農民、商人、職工、漁民、
歌姫や踊り子、法悦に酔う人びと、雲の上の天子たち、
ほかならぬ孔子その人、大詩人や英雄、戦士、特権階級、とにかく全部が、
あらゆる方角から、アルタイの山から、チベットから、
くねくねと遠く遥かに流れゆく中国の四つの川から、
南の半島や準大陸の島々から、マレーシアから、群れをなし隊伍を組んで進んでくる、
これらのものと彼らに属するすべてのものが手にとるようにわたしには見え、わたしによって捉えられ、
そしてわたしも彼らによって捉えられ、友として抱き締められる、
わたしがこんなふうに彼らをすべて歌い尽くしてやるまでは、「自由」よ、彼ら自身の ために、そして君のために。

実はわたしもわたしなりに声張り上げてこの花やかな行列に加わるのだ、
歌うことこそわたしの仕事、行列よりも高らかにわたしは歌う、
西の海のほとりで世界を歌う、
空の星にも劣らぬほどかなたにひしめく島々をたっぷりと歌い上げる、

古今無類の壮大な新帝国を幻夢のように見えてくる姿のままにわたしは歌う、
わたしの愛しいアメリカを歌い、さらに偉大な至高者を歌い、
海に群れ集う島々にやがて花開く千をかぞえる町々の未来図を歌う、
わたしの帆船や汽船たちがそれらの群鳥のあいだを縫い、
わたしの星と縞との旗が風にはためき、
交易が開かれ、長きにわたった眠りもようやくそのつとめを終えて、さまざまな種族が再生し、蘇生する、
生活が、仕事がふたたび始まり──その目的をわたしは知らぬが──古い、アジア起源のものたちが運命のさだめどおりに蘇生する、
今日という日を皮切りに、世界のつくる輪のなかで。

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