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ただ一撃にかける  その一

あんり4


ブロードウェーの華麗な行列   ウオルト・ホイットマン

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西の海を越えて遥か日本から渡来した、
頬が日焼けし、刀を二本手挟んだ礼儀正しい使節たち、
無蓋の馬車に身をゆだね、無帽のまま、動ずることなく、
きょうマンハッタンの街頭をゆく。

「自由」よ、使命を帯びた日本の貴公子に伍して、
殿をつとめ、上から覗き、まわりに群がる人びとのなかに、あるいは行進する隊列の なかに、
わたしが見ているものを他人も見ているかどうかは知らず、
ともかく歌おう君のために、「自由」よ、わたしに見えるそのものの歌を

幾百万の足をそなえたマンハッタンが堰を切って路上に溢れ、
雷鳴もどきの祝砲がわたしの愛する誇らしい号音でわたしの目をさまし、
丸い口した人砲がわたしの愛する硝煙と火薬の匂いのさなかから歓迎の挨拶を吐き出す
一閃火を噴く大砲がわたしの眠気をすっかりさまし、天空の雲がわたしの街に美しい薄靄の天蓋をかけ、
まっすぐ伸びる無数の茎が、波止場を埋めるあまたの木立ちが、さまざまに色どられて花やかにひしめき合い、
絢爛たる装いのあらゆる船がその頂にそれぞれの旗を掲げるとき、
長旗がたなびき、窓からは花綱が吊りさげられて街頭を飾り.
ブロードウェーが端から端まで、あるいは佇み、あるいは通り過ぎる徒歩の人たちの天下となり、おびただしい数の人びとがぎっしりとひしめき合うとき、
家々の正面が出入りする人びとで活気づき、幾万もの目がいっせいに釘づけにされて凝視し、
島ぐにからの客たちが歩を進め、花やかな行列が目の前を進みゆき、
招請がなされ、そして幾千年も待機していた応答がついに発せられるとき、
わたしもまた身を起こし、応答しつつ、舗道におりて群集と一つになり、彼らとともに凝視する。(酒本雅之訳)  

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