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ボードゲーム紹介③:neu

好きなボードゲームの面白さをなるべくエッセンスだけ取り上げて紹介するシリーズも既に三回目。有名どころばかりだが、プレイ済みの人は分かるぅと、これからの人はやってみようと思ってもらえたら嬉しい。

今回取り上げるのはシンプルなカードゲームである『neu』である。

ゲーム紹介

neuは常に3枚の手札を抱えながら、場札の合計が101を超えないようにするゲームだ。自分の番が来たら手札から1枚だして山札から1枚引く。

6人程度までできるゲームで、1ラウンドは長くても3分ほどで終わる。3ストックを失った人が出た時点で終了だ。

このゲームは

計算が苦手……

という人でも楽しめる。人による好き嫌いがほぼなくルールも簡単な、持っておくと便利なゲームの一つであることは間違いない。

ゲームとは運である

見出しに偽りなし。

このゲームははっきり言えば運ゲーだ。後述するように常に強いカードを引き続けられれば絶対に負けないし、弱いカードを引けばあれよあれよというまに3ストック失ってしまう。

ゲームとは運と思考で構成されている、というのが持論だ。思考できる部分を大きくすればアブストラクトと呼ばれるゲームに近づくし、運を大きくすればもちろん稀代の運ゲーとなる。

そしてゲームとは楽しむものである、というのがもう一つの持論だ。思考できる部分は往々にして経験がものを言う。ルールだけ教えられてもその辺の幼稚園児が将棋のプロに勝てるはずがない。

しかし負ければ楽しくない。ではどうするか?

運でしょ!

運は全てを解決してくれる。明日の予定も前世からの悪行も全て飲み込んで、何かしらの形にしてくれる素晴らしいものらしい。

neuはどれだけ経験を積もうが負けるときは負けるし、勝つ時は恐ろしいほどか勝てる。全て運の御心のままだ。neuの永世名人みたいな人がいても、さっきneuを知った人が圧勝できてしまう。

勝つことは楽しい。neuは運によってそれを我々に教えてくれる。
ただ重要なことは、いつその運に見放されるか分からないことだ。

このゲーム、運要素を高めるために『50』というカードが入れられている。
やってもらえると分かるのだが、後半の白熱したプレイ展開中に出てくることが多い。ソースはないが、テストプレイをやっていて最後に追加されたカードだと思っている。

絶対にどこかのアホタレが

これ50入れたら面白くね?

とか徹夜明けみたいな発想で入れたに違いない。そいつに言おう、お前は天才だ。ゲームの何たるかが分かっている。

初心者と経験者の垣根を壊し、誰にも分け隔てなく勝つ楽しさ、ゲームの面白さを教えてくれるものこそが真に優れたゲームだと思うのだが、どうだろうか。

ワンプレイ

運だけがこのゲームの全てではない。ワンプレイの短さが重要だ。

あまりボードゲームの経験がない人相手にゲームをする際には重要なことが二つある。一つはルールが簡単なこと、そしてもう一つがワンプレイが短いことだ。

両者は完全に区別されるものではないのだが、ここでは後者に注目したい。

なぜワンプレイが短いことが重要なのか?

ずばり、負けをひきずらないからだ。

説明に10分、ワンプレイに45分かかるゲームをやっとこさプレイして、負ける。この悔しさがいつか初心者だったあなたには分かるはずだ。

もうワンプレイできるほど元気な人ならそれでいいのだが、この世界は後ろ髪を引かれても前を向き続けられる能天気だけで構成されているわけではない。ちなみに私はその能天気だ。

負けた!悔しい!でももう一回!

この思考回路に人を陥れるためには、そしてボードゲームを楽しいと思ってもらうには、負けた悔しさを跳ね除けて、もう一度同じゲームの載った盤面に向かわせるほどの強い「何か」が必要だ。

それが勝ちへの期待だ。

そこに根拠はなくていい。むしろ運だと割り切ることが勝ちへの期待を産み出す。今はツイてなかっただけ、明日から本気出す。思考は完全にギャンブラーだが、勝つことへの無根拠な期待こそが必要だ。

しかし勝ちへの期待はあるものによって容易にへし折られてしまう。万人が越えようとするも誰も越えられていないもの。そう、時間だ。

プレイ時間の長さが、勝ちへの期待を絶望へのオーバーチュアに変えてしまう。勝てると思っていた数分前の自分を殴ってやりたい、そう思ったことは一度や二度ではないはず。

長くなったが、プレイ時間が短ければ、勝ちへの期待はアドレナリンとなる。それが続く間に駆け抜けるだけだ。

まぁ短いプレイ時間の方が、何回も繰り返しできるし楽だよね、という話である。

2パターン

neuは大きく分けて二つのゲーム展開がある。

一つは少しずつ階段を駆け上っていくように数字が大きくなっていく。この場合大抵みんな強いカードである、マイナスのカード(=緑カード)や役カード(=黄色カード)を手札に抱え続けている。そしてその数字が限界になったときに火蓋が切られるのだ。

この溜めて溜めて溜めて爆発する感じは、トリックテイキングの名作ゲームである『インフェルノ』に非常によく似ている。また機会があればそちらも紹介したい。

そしてもう一つは先手必勝とばかりに、誰かが開始早々101を出して、体制を整える前に勝ち切ってしまおうとする展開だ。当たり前だが運ゲーをさらに加速させて、自縄自縛となる可能性が非常に高いので、この戦法は取り扱い注意だ。

大抵前者になるが、たまに後者が来た時がたまらない。やっぱりスパイスはどこにおいても小粒でピリリと辛いのだ。

テンポ

このゲームの核はテンポにある。

いや別に山手線ゲームのように手を叩けと言っているわけではない。

基本的にはこのゲームはカードを出して、場札の合計値を口に出すだけなので、さくさくさくさく進む。

するとタダでさえ速いゲーム展開がさらに速くなる。慣れた人同士でやればラウンドに1分もかからないだろう。

そしてもう一つ、自分の中のテンポが楽しさを倍増させてくれる。
分かりやすくいえば、走り幅飛びをする陸上選手がスタジアムを煽るあれだ。嫌な例えをすれば、全然答案が埋まってないのにあと10分ですと言われた時のあの焦燥感だ。

早まるゲームスピードに自分で自分を追い込んでいく。気持ちを追い込んで、ギリギリの戦いの中で勝利する快感。

あぶねぇ、俺も手札カツカツだったわ……

このセリフを何度聞いたことだろうか。みんなギリギリのところで戦っているのだ。ゲームは遊びじゃないんだよ!

さいごに

運と思考の絶妙なバランス、ルールの簡単さ、1プレイの短さ、その他ゲームの面白さをこれでもかと詰め込んだ『neu』。初心者から経験者まで幅広く受け入れられる懐の広さに感激しっぱなしなのである。

外箱がダサい?多分みんな思ってる。

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