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婚礼の日に

「今からどうしろと…」
奥方を迎えるにあたり、あるじがまちひとつを贈り物にすると言い出したのが婚礼の三日前。臣下は揃って頭を抱えた。
「リボンでもかけますか」「寝言は寝て言え」
「花でいっぱいに」「それでは満足なさるまい」
「ところで奥方はどんな方なんだ」「知らないのか、なんでも実家はパン屋とか」
急に一人が立ち上がる。
「こんなところに籠ってるから煮詰まるんすよ。ちょっと出てきますわ」
止める者はいない。

当日。まちには市が立った。通りを彩るのは多種多様なパンと焼き菓子。香ばしいかおりがあたりを包む。
輿からおりた娘はその空気を胸いっぱいに吸い込んだ。馴染み深いかおりに笑みがほころぶ。くたびれた臣下たちも、物陰でほっと胸をなでおろした。

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