『メイドインアビス』と異界
メイドインアビスの2期列日の黄金郷はちゃめちゃに面白いですね。これのためだけにアマプラに加入する価値あるまであります。
2期は特に”母親”が一つのキーとなる話ですね。そもそもリコは母親探しを目標としてアビスに潜っている面もあるので、当然と言えば当然の展開でしょう。そして、主人公たるリコの出身がアビスであるということも併せて考えたとき、アビスという大穴は母親の子宮の比喩なのではないかと推測できます。そう考えると、2期に限らずにメイドインアビスという作品全体には母親の存在が通底しているようですね。
よく物語では、異界・異世界に行くには象徴的に死ななければならないといいます。例えば、川の上に架かる橋を渡る(=彼岸を渡る)とかトラックに轢かれて異世界転生とかが挙げられますね。メイドインアビスではまさにアビスに潜るということが異界に行くという行為に当たりますが、リコとレグはアビスに潜る際に死を象徴するような儀式はしたでしょうか。おそらくはしていないと思います。
リコとレグはアビスで生まれたことから、2人にとってはそもそもアビスこそが現世だからです。なぜそう言い切れるかと言えば、リコはアビスから地上に出るときに一度死んでいるからです。アビスの遺物によって蘇生されましたが、一度確かに死んだとの描写があることから、リコにとっては地上こそ異界であり、地上に出るための手続きとして象徴的に死ぬ必要がありました。
そんなリコにとってアビスは故郷とも呼べる場所であり、アビスへの冒険というのはいわば故郷を探すための物語であり、また、母親を探すための物語です。しかし、本作における故郷を探すということと、母親を探すというのは一致しないように思うのです。
2期では、故郷を追い出された人物たちが集まり、望郷の果てにアビスに潜ります。しかしながら、結果としてこの探掘家たちは、アビスの呪いによって肥大化した母性に包摂されてしまいます。そこではアビスの呪いからも母性に守られ、停滞した時間を150年も過ごすことになります。望郷の冒険が母性に包摂されるに至るというのは、まさに現在のリコの状況から危惧されることそのものではないでしょうか。
望郷の行く末が母性であるならば、その母性に打ち勝つほどの何かを冒険の中に見出さなければなりません。今回の2期のストーリーによってその何かをリコが得ることができるのか、そこが肝要なのではないかと思いました。
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