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辻仁成『白仏』読みました。

隼人が亡くなったと聞いた鐡造は隼人が通っていた遊郭で女を抱いたが、稔は抱けなかった。ここでは、遊女を抱くことで隼人の死を受け入れることになるはずだが、それが出来ない稔は死と向き合うのを恐れたのだろう。また、初恋相手の緒永久の幻想を忘れられないのも死を受け入れられずにいることを表している。

そう考えると、骨仏の建立に至ったのは死を受け入れることが出来たからだが、それは隠し持っていた銃を捨てることで表現されていた。銃は殺人のための武器であり、また自分の身を守る道具でもあることを稔は戦争を通して実感している。その銃を捨てるということは、生への執着を捨てると読めるのではないか。

しかし、それは生を蔑ろにするということではない。縁側から落ちかけていた金子を助けたことから分かるように、死と向き合い尊重することで生の意義が見えてくるのだ。

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