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失恋墓地

閑静な住宅街を抜け、緩やかな坂道を登っていくと、丘の上の開けた場所に出る。眼下に住宅街を一望するその場所にあるのが「失恋墓地」だ。

この墓地には、様々な事情から手放すこととなった、恋人との思い出の品々が眠っている。観光地としても有名なこの場所には、今も全国から多くの人たちが訪れ、自らの気持を供養している。

その墓地を抜けてさらに奥へと進むと、そこにあるのが「借りパク墓地」だ。もういらないけど今更返すわけにもいかないし、かといって捨てたり売ったりするのも気が引けるしな、といった、行き場をなくした友情の残滓がひっそりと眠っている。

その墓地をさらに抜けて、今度は坂道を下っていくと、森の入り口にあるのが「何かに使えるかも墓地」だ。この墓地は、コード類を縛っている小さい紐、弁当に付いている調味料の小さな容器、プラスチックのスプーンやフォーク、いい感じの空き箱など、何かに使えるかもしれないととっておいたものの、結局一切使うことのなかったモノたちの安住の地となっている。

その墓地を過ぎ、さらに森の奥へ進んでいくと、やがて開けた場所に出る。鬱蒼とした森に囲まれ、静謐な雰囲気に包まれたこの場所こそが、目指す「毎週ショートショートnote墓地」だ。

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