見出し画像

イケメン月餅

イケメン月餅の朝は早い。

早朝5時に起床すると、ふんどし一丁の姿で100m離れた井戸まで行き、頭から水をかぶる。いわゆる水行である。これは、夏や冬などの季節、雨や雪などの天気に関わらず、必ず行われる。
水行が終わると、身支度を整え本堂で読経、座禅などを行う。その後、仏様に水や花を供える。
それらが終わると、ようやく朝食となる。朝食が終われば、開門して境内の清掃だ。多くの月餅が、この厳しさに耐え切れずに辞めていくことになる。真のイケメン月餅になれるのは、ほんのわずかだ。

朝のお勤めが終わると、今度は松の実やクルミなどのナッツ類を細かく刻み、小豆餡を鍋に入れ、水を適量加え火にかける。元の餡と同じくらいの硬さになったら、上記のナッツ類を加えてさらに火にかける。元の餡よりやや硬めになるまで煮詰めたら火からおろし、30分ほど冷やす。冷めたら小分けにして丸める。
餡ができたら、次は生地だ。生地は、卵に上白糖やバター、ハチミツなどを加えて作る。そうやってできた生地で餡を包み、約180度のオーブンで12~13分ほど焼くと、イケメン月餅の出来上がりだ。

「おなか空いたな……。もうお昼か……」
「やあ、どうしたんだい少年」
「あ、あなたはイケメン月餅! 実は、朝からビックマック10個しか食べてなくて」
「そうか、おなかが空いてるんだね。それなら、僕の臀部を食べるといい」
「ありがとう、イケメン月餅!」

こうして、イケメン月餅は町の平和を守っているのだ。

※参加させていただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?