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手抜き介護 58 ソファが欲しい

実家で「新しいソファを買いたい」と最初に聞いてから、もう5年以上経った。今のものは、私が高校生の時に一緒に見に行った覚えがあるから、何と40年超え! さすがにあちこち擦り切れがあるが、カバーでごまかして使っている。

座面がもう少し硬くて、「お父さんが昼寝で落ちてもケガしないように」低いものが良いとのこと。デザインや材質は見てからと、3人で家具屋さんに行ったこともある。地元で老舗のその店は、ソファだけでもかなり広く展示していた。気に入ったものに母が腰かけ、「あら、良いわね。お父さん、これどう?」と父を呼び、父が「良いんじゃないか」と応える。

父にとってはソファなんて何でもいいけど、新しいものの座り心地はまんざらでもないようだった。でも合意しているのに、母はすぐ次のソファに進んで「お父さん、どう?」「良いな」を数回繰り返す。最終的に、これ!と思うものは見つけられず、そのときは2人とも歩き回って疲れただけで帰ってきた。

ネットサイトで良さそうなものをプリントして見せたこともあるが、「やっぱり実物を見ないと」と決められないまま今に至る。どうやら母のソファ熱は、突然やってきて、そのうちすうっと引いていくようだ。

そして今、「もう見に行けないから、アンタが買ってきて」という。「任せるから。お金は出すから」。いやいやいやいや。それはない。何を買ったって「あら、良いね。こんなのが欲しかったの」なんてことはあり得ない。丁寧にはっきりとお断りして、今回の熱が早々に冷めることをひたすら待っている。

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