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手抜き介護 110 父の夏ズボン

父がひどいズボンを履いていると、母がいう。見ると、擦れて生地が薄くなり、糸がほつれて毛玉もいっぱい、確かにひどい状態。でもそれが一番履き心地良いらしく、何度言っても取り替えない。もちろん買い物にもそのまま出かけるので、妻としては見ていられないようだ。

先日出かけた商業施設で、「綿の安いやつ」を探した。サイズが豊富でお手頃価格なところを見つけて、「ここで決めよう」と母。

私「ウエスト88くらい?」
母「そんなにないと思う」
私「股下は結構ありそうだね」
母「分かんない。アンタが選んで」

前に店頭で父に試着してもらったときは、確か一番長いのがちょうど良かった気がする。ウエスト85,股下78、これくらいじゃないかな。滅多に来られないから2本買っておこうと言われたが、本人に合うか分からないのにそれは危険。

帰ってきて履いてみたら、「3センチ長い」と父が言う。他は大丈夫のようだけど、すぐに脱いで元のぼろズボンに履き替えた。裾上げくらい、以前の母なら大得意分野だが、今はもう出来ない。私はといえば、今も昔も不得意分野。

股下75というのもあったから、バスで交換に行くことにした。色違いをもう1本という母の指令を受けて探してみるも、今度は合うサイズがない。綿ではない、夏向きの薄手を見つけ、サイズ表示が違うのでかなり悩み、ダメだったらまた交換に来ようと購入してみた。

その薄手のズボンが思いのほか父にフィットしたらしく、今度は履いて立ったまま値札を引きちぎろうとする。さっきのは履けたが今一つで、今度のは気に入ったんだね。この日以来毎日そのズボンを履いているけど、古いのも捨てさせてくれないと母が嘆いている。


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