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手抜き介護 57 におう

頭のにおいをかいでくれ、と母が言う。良いにおいもしないけど、特に臭いわけでもない。次に服をと促されたが、そっちも普通の布のにおい。ヘルパーさんに、部屋が臭いと言われたとのこと。

前にもあった。デイサービス先で匂うと言われたと、帰ってきてから大騒ぎだった。玄関先で靴や上着に消臭スプレーをかけ、窓を開け換気扇を回し、100均のお線香なんか買ってくるからだと父に迫った。母自身は、もうずいぶん前からにおいを感じなくなっている。自分でもうすうすそれに気づいているから、余計敏感になるのかもしれない。

部屋のにおいは、強くはないけど確かに感じる。でも祖母の家にもあった、古いにおいだ。お昼寝に使っているクッションとか毛布とか、クリーニングに出していない外出着とか、そこに高齢者世帯ならまあ、独特のにおいになりそう。

でもヘルパーさんが「臭い」なんて言うかな。だいたい仕事柄、におう場面に出くわす機会は少なくないはず。何か聞き間違えたか表情を裏読みしたかではないかと思うけど、思い込んでいるのだから仕方ない。

ソファカバーや毛布を洗って、消臭ビーズをあちこちに置いてみる。喫煙の習慣があったら、そのにおいで全部かき消されるから、むしろ気にならなくなるのかも。サワデーたばこの香りとか、一部にはウケそうだと考えてみたりする。

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