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#ショートショート

通勤電車より、OLレポート

   OLのみなさんこんにちは。  サトウチヤコ(仮名)のOLレポートです。  電車の中ででも暇つぶしに読んでね。  名前の下に役職名をつけるのってすごい変なかんじがしたんだ。でもそれにももう慣れたよ。  最初会社に入った時、なんでみんな疲れたカオしてんのーってびっくりしたんだ。  目線じっと動かさないでカラ元気でしゃべってんのね。すごい変だよ。なんでそこまでして働くのって思ったけど。  いまはあたしそんなカオで働いてんだろうなと思うよ。     ■   電

時計の絵ばかり描いている

(あるおじいさんより伝言) 最近時計の絵ばかり描いているんです。 ばあさんの古い抽斗からでできた、セミハードの折れたパステルで。 そっと指でぼかすと、見慣れた楕円の、振り子の、八角形の、それぞれの時計が再現される。 時計はいつも見ていた。部屋の風景に馴染んで、なんら特別なものと思ったことはなかった。 ですが、その時計が壁にかかっていたある一時期に、いつも見ていたものだったんですね。 ごはん、テレビ、送り迎えやパスタの茹で時間、出発までの何分かや、長電話にしかめっつ

milkの王冠

crownかclownか Lはピエロ。Rは王冠。 一文字違いでこんなにちがう。      ■ 鳥のさえずる声で若干うんざりしながら目が覚めた。 もう日差しは強くカーテンのわずかな隙間からまっすぐに射る。 鳥ならぬこちらはまだ眠いのだ。 誰もが朝型の生活をしていると思うなよ、と鳥のやつに悪態をついてみるが当然通じはしない。窓の外で、楽しげだ。食って寝るだけの生を満喫している。などと思うのは人間の思い込みかもしれないが。    ■ 遅い朝食はシリアル。新商品のベリー入り

曙の子

大きな重たいドアから細く漏れる灯りは眩しかった。 隙間から見えるリノリウムの床に反射して白い。 ステンドグラスの色とりどりを擦り抜けて、光たちが着地して整列した。 赤、青、ばら色、黄色に、緑。めいめいが、お前の顔は赤過ぎるだの、そっちこそ、変な色だのと、たわいも無いことで騒いでいる。 ステンドグラスには神話に類する逸話が描かれてあった。三賢人が現れた場面のようであった。 椅子の上に着地したやつは、お爺さんが隣の席からはみ出させている膝に登ろうとして滑っている。 歌

はと

鬱屈。散歩をしていても、散歩に出ても、とげとげしているこころ。 うろついているうちにさしかかったのは、子供の遊具があるひろばの隅だ。柵の外に、白く動くものがある。生き物だ。ハトか。白は珍しいな。 小さなふくふくした生き物かそこにいるという思いは、ふっくらとした気持ちにさせた。 愛すべき生き物の存在ひとつで、こんなに救われるなんて。 すぐに気づいた。 ビニール袋だった。 がっかりした。 あったはずのいのちがそこにない感覚。 あるべきあたたかさが無機物だった空虚さ。