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de&iマガジン〜ダイバーシティ関連記事〜

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ダイバーシティ・コンテンツ・リサーチャー草冠結太のマガジンです。ダイバーシティ&インクルージョンを感じられるイベントやコンテンツに関する記事をまとめます。あとヒップホップも。
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#映画

映画「エゴイスト」を観て、かつての家族を思い出した

ある日、私の母親がボーイフレンドを連れて帰ってきました。 そのボーイフレンドは、トランスジェンダー男性でした。R君と言いました。 その日から、私たちは家族になりした。 彼とは、私が大学生になってから就職して、一人暮らしをするまで、一つ屋根の下で暮らしました。草冠家の祖父母ともども。 私、弟、母親、FtMのR君、じいさん、ばあさん。 多様性とやらに屋根をのせたような家。 ま、うまくいかないですわな。 なので、映画「エゴイスト」の終盤は、観ていて気が気じゃなかった。 「浩輔

このチョコは元気でる!〜ドキュメンタリー映画「チョコレートな人々」感想〜

「俺がやりたかったことはこれだ。俺が怯えているのも、これだ」 このドキュメンタリー映画が始まった瞬間、憧れとおののきが同時に押し寄せてきました。そして、それは最後まで途切れることなく。 観終わった後。感情の反復横跳びでドッと疲れた脳みそとは裏腹に、心には何かが湧き立ちました。 「さて、俺は何がしたいんだ?何ができるんだ?」 と。映画館から地上へでる時、階段を上がる足にグイグイと力がこもったことを覚えています。 その映画とは「チョコレートな人々」。 ストーリーはこんな感

恋愛という鍵でしか、幸せの扉は開かない。わけがない。〜映画「そばかす」感想記〜

初夢は見ましたか? 私は「恋の夢」でした。しかも一晩で豪華二本立て。 学生時代にフラれた人への恋。 そして、社会人になってから浮気された人との恋。 どちらも、明けましてフラれました。 悪夢のような出来事を、わざわざ悪夢で再現するという、笑ってないと泣けてくる型の初笑いで目覚めたのですが。 これほどまでに恋愛を意識した(というかウナされた)夢を観てしまったのは、年末に観たとある作品がとんでもなく面白かった影響です。間違いない。 そのとんでもなく面白かった作品とは 「そばか

90歳の館長と9人のドラァグクイーンのドキュメント映画「十人十色の物語」が、寝不足してでも観る価値ある名作だった。

駅前の女子高生たちが、バッと一斉に私を見ました。 さながら、チーターを察知したガゼルの群れ。 「キャー!ミミズク、めちゃかわー!」 と、私が叫んでしまったから。 そりゃ見ますよね。 だって、ヒゲのオッサンが野太い声を、甲高く響かせてるんですから。 「きゃーみみずくめちゃかわー。だって」 「キャハハハハッ!」 誰かがマネをして、ドッと笑いが起きていました。 たまたま、ペット用の小さなフクロウを肩にのせて散歩してる人がいて。 私が思わずハシャいでしまったのがいけなかった。

明るく、楽しく、しぶとく!映画「こころの通訳者たち」に響く対話のクリエイティビティ〜ラップ最高!パンフに”たたり”!〜

諦めない。それだけで、こんなに痛快だなんて。 すべての仕事がこの映画のようでありたい、と感じた映画でした。 いわゆる”お仕事もの”ではないに。 その映画とは「こころの通訳者たち」。 素晴らしい映画だったので、その感想をここに書き留めておこうと思います。 手話に音声ガイドを?「こころの通訳者たち」のあらすじ。 この映画、ドキュメンタリーなのですが。 事実は小説よりも奇なり、を地でいってまして。 話が少し混み入ってます。なので、ザックリとあらすじを。 かつて「ようこそ

家族にトランス当事者がいた私が悶絶した映画「片袖の魚」〜マイクロアグレッションは本当に”マイクロ”か問題〜【ネタバレ注意】

『居心地が悪くなる映画』というものがあります。 もちろん、いい意味で。 自分が今いる場所を疑うきっかけになってくれる。そんな映画。 シアターフォーオールで配信されている「片袖の魚」という映画が、まさにそれでした。 悪意なき人々が意図せずに、だからこそ日常的にとってしまう差別的言動。 そんな、"マイノリティへの小さな攻撃”がテーマの一つです。 監督いわく 「日本で初めて、トランスジェンダー当事者を一般公募でオーディションして作られた映画」。 とのこと。 読後感は、ソワソワ

ときどき目を閉じて観たら2倍おもしろかった。映画「さとにきたらええやん」。

目をとじて映画を観たこと、ありますか。 「さとにきたらええやん」という映画を観ました。 ときどき、そっと目をとじて。 もちろん、寝るためではありません。 (映画館でのうたた寝ほど甘美なものはありませんが) 東京・田端にあるシネマ・チュプキ・タバタという映画館の 音声ガイド(ユニバーサル上映)が、素晴らしいという噂を耳にしまして。 それを体験してみたかったのです。 しかも。心待ちにしていた「さとにきたらええやん」の再上映。 これは行くしかない!の一択。 結果、この鑑賞体